進行乳癌で、アントラサイクリン既治療または抵抗性で、タキサンに抵抗性の患者に対し、ビンカアルカロイド系微小管重合阻害薬のvinflunine(VFL)とカペシタビンの併用は、カペシタビン単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、忍容性も良好であることが、フェーズ3試験から明らかになった。5月30日から6月3日まで米国シカゴで開催された第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO2014)で、スイスClinique de GenolierのMatti S. Aapro氏が発表した。
VFLは、アントラサイクリン既治療で、タキサンに抵抗性がある進行乳癌に対し、単剤での効果が報告されており、カペシタビンとの相乗作用が検証されている。
Aapro氏らは、アントラサイクリン既治療で、タキサンに抵抗性の進行乳癌患者を対象として、VFLとカペシタビンの併用とカペシタビン単剤を比較する、非盲検、多施設共同のフェーズ3試験を実施した。
対象は、3レジメンまでの化学療法による治療歴がある、局所進行性または転移を有する乳癌患者だった。アントラサイクリン既治療または抵抗性、かつタキサンに抵抗性で、ビンカアルカロイド系の薬剤またはカペシタビンの投与は受けていないこととした。
治療は3週を1サイクルとし、VFL 280mg/m2を1日目、カペシタビン1650mg/m2を1-14日目まで投与する群(VFL+カペシタビン群)、またはカペシタビン2500mg/m2を1-14日目まで投与する群(カペシタビン群)のいずれかに、対象を1:1でランダムに割り付けた。
同試験の主要目的は、VFL+カペシタビンのカペシタビン単剤に対する優越性を検証することで、主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)だった。ITT解析対象において、独立審査委員会(IRC)が評価した。副次的評価項目は、全生存期間(OS)、奏効率、病勢コントロール率(DCR)、安全性、EORTC QLQ-C30とQLQ-BR23の評価によるQOLだった。
764人が登録され、VFL+カペシタビン群384人、カペシタビン群366人となった。VFL+カペシタビン群とカペシタビン群において、年齢中央値はいずれも54歳、Karnofsky Performance Statusが90-100の患者はそれぞれ65.9%と64.0%、HER2陽性乳癌は17.2%と19.4%、トリプルネガティブ乳癌は26.8%と27.5%、内臓転移は77.3%と75.6%だった。アントラサイクリンとタキサンに抵抗性の患者は、VFL+カペシタビン群ではそれぞれ63.5%と96.1%、カペシタビン群では62.2%と96.1%だった。
主要評価項目であるPFS中央値は、VFL+カペシタビン群5.6カ月、カペシタビン群4.3カ月、ハザード比0.84(95%信頼区間:0.71-0.99)となり、VFL+カペシタビン群で有意に延長した(p=0.0426)。
奏効率は、VFL+カペシタビン群27.0%、カペシタビン群22.6%だった(p=0.2670)。DCRは、VFL+カペシタビン群68.0%、カペシタビン群60.5%で、有意差が認められた(p=0.0462)。奏効期間中央値はそれぞれ8.3カ月と5.5カ月で、VFL+カペシタビン群で3カ月の延長が示された。
OSには有意差がなかったが、VFL+カペシタビン群で2.2カ月の延長傾向を示した。OS中央値は、VFL+カペシタビン群13.9カ月、カペシタビン群11.7カ月、ハザード比0.98(95%信頼区間:0.83-1.15)となった(p=0.7657)。
薬剤の相対的用量強度(RDI)は、VFLは98.6%、VFL+カペシタビン群のカペシタビンは94.1%、カペシタビン群のカペシタビンは92.1%だった。
VFL+カペシタビン群の忍容性は、標準的な単剤療法と同程度に良好だった。VFL+カぺシタビン群で観察された主な有害事象は好中球減少で27%に発現し、カペシタビン群では6.6%だった。発熱性好中球減少症の頻度は低く、VFL+カペシタビン群では2.1%、カペシタビン群では0.5%だった。重度の手足症候群は、VFL+カペシタビン群では3.7%に発現したのみで、カペシタビン群では18%と多かった。
全般的QOLの評価では、12週目からカペシタビン群では悪化したのに対し、VFL+カペシタビン群では治療期間を通して良好に維持されていた。
Aapro氏は「VFL+カペシタビンは、進行乳癌で、アントラサイクリン既治療または抵抗性で、タキサンに抵抗性の患者に対し、新たな治療選択肢となると考えられる」と結論した。