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2014/06/03

エキセメスタン+卵巣機能抑制で閉経前HR陽性乳癌患者の再発リスクが低下、フェーズ3TEXT/SOFT試験の共同解析の結果【ASCO2014】

森下紀代美=医学ライター

 閉経前ホルモン受容体(HR)陽性乳癌患者に対し、卵巣機能抑制(OFS)との併用において、アロマターゼ阻害薬(AI)のエキセメスタンはタモキシフェンと比べて再発リスクを有意に減少させることが、2件のフェーズ3試験、TEXT試験とSOFT試験の共同解析から明らかになった。5月30日から6月3日まで米国シカゴで開催されている第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO2014)のプレナリーセッションで、スイスInstitute of Oncology of Southern SwitzerlandのOlivia Pagani氏が発表した。

 閉経前HR陽性乳癌患者に対する最適な術後内分泌療法は明らかになっていない。現在はタモキシフェンの5年以上の投与が標準治療と考えられており、OFSの追加が考慮される場合がある。OFSを行った患者に対し、エキセメスタンはタモキシフェンと比べて無病生存率(DFS)を改善するかについてはわかっていなかった。

 TEXT試験とSOFT試験は、閉経前HR陽性乳癌患者における最適な内分泌療法を決定するためにデザインされたInternational Breast Cancer Study Group(IBCSG)、Breast International Group(BIG)、North American Breast Cancer Group(NABCG)の共同国際試験で、27カ国が参加している。

 TEXT試験の対象は、閉経前HR陽性乳癌で術後12週以内の患者2672人で、タモキシフェンの5年間投与+OFSとエキセメスタンの5年間投与+OFSの2群にランダムに割り付けし、化学療法は選択肢とした。

 SOFT試験の対象は、閉経前HR陽性乳癌患者3066人で、タモキシフェンの5年間投与、タモキシフェンの5年間投与+OFS、エキセメスタンの5年間投与+OFSの3群にランダムに割り付けし、化学療法を行わない場合は術後12週以内、化学療法を行う場合は終了後8カ月以内に卵巣機能が回復していることとした。

 同解析ではイベント発生率が低かったためプロトコールが改定され、今回はエキセメスタンに関する結果が報告された。タモキシフェンにOFSを追加する効果については、現在SOFT試験で検討中であり、2014年末に報告される予定である。

 今回の解析対象は、両試験から、エキセメスタン(25mg/日)の5年間投与+OFS群(エキセメスタン+OFS群)とタモキシフェン(20mg/日)の5年間投与+OFS群(タモキシフェン+OFS群)の患者計4690人とした。OFSは、GnRHアゴニストのtriptorelinの5年間投与、卵巣摘出術、卵巣の照射で行った。4690人中、40歳未満は27%、リンパ節転移陽性は42%、腫瘍径>2cmは36%、HER2陽性は12%、手術からランダム化までの期間の中央値1.6カ月だった。両試験とも、化学療法を行った患者(2694人)は、40歳未満、リンパ節転移陽性、腫瘍径>2cmの患者が多かった。またSOFT試験で化学療法を行った患者は、手術からランダム化までの期間の中央値が8.0カ月と長かった。

 主要評価項目はDFSで、ランダム化から局所浸潤性病変の再発、遠隔転移、対側乳癌、2次性悪性腫瘍、死亡までとした。追跡期間中央値は5.7年だった。

 その結果、5年時のDFSは、エキセメスタン+OFS群(2346人)91.1%、タモキシフェン+OFS群(2344人)87.3%、ハザード比0.72(95%信頼区間:0.60-0.85)となり、エキセメスタン+OFS群で相対リスクが28%低下することが示された(p=0.0002)。

 さらに、5年時の乳癌無再発率(BC-free interval)はエキセメスタン+OFS群92.8%、タモキシフェン+OFS群88.8%、ハザード比0.66(95%信頼区間:0.55-0.80、p<0.0001)、無遠隔転移生存率(distant recurrence-free interval)はそれぞれ93.8%、92.0%、ハザード比0.78(95%信頼区間:0.62-0.97、p=0.02)となった。一方、全生存期間(OS)はそれぞれ96.9%、95.9%、ハザード比1.14(95%信頼区間:0.86-1.51、p=0.37)で有意差は認めなかった。

 化学療法を行わなかった患者(1996人)では、エキセメスタン+OFS群の5年時の乳癌無再発率は97%を超え、タモキシフェン+OFS群と比べて両試験とも約3%高かった。化学療法を行った患者では、エキセメスタン+OFS群の5年時の乳癌無再発率は、TEXT試験で91.5%、SOFT試験で86.1%で、タモキシフェン+OFS群と比べてそれぞれ5.5%と3.9%高かった。

 有害事象は、閉経後の患者で認められる事象と同様であり、グレード3/4の有害事象発現率は、エキセメスタン+OFS群の31%、タモキシフェン+OFS群の29%であった。両群で多く発現した有害事象はホットフラッシュ(10% vs 12%)、高血圧(6.5% vs 7.3%)、うつ(3.8% vs 4.4%)などであった。治療の早期中止例はそれぞれ16%と11%となったが、全般的なQOLは両群間で差はなかった。

 Pagani氏は「エキセメスタンとOFSの併用は、閉経前HR陽性乳癌の新たな治療選択肢となる。ただし、OSには有意差がなく、長期の追跡が必要」と述べた。

 この演題のディスカッサントである米University of Pittsburgh Cancer Institute and UPMC Cancer CenterのNancy E. Davidson氏は、「閉経前の全患者に化学療法が必要なわけではなく、エキセメスタンとOFSの併用はエビデンスに基づいた選択肢である。必要な投与量と費用についても熟慮する必要があるが、内分泌療法の効果を忘れないでほしい」とした。

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