肥満が乳癌死に対して、明確な独立した影響を与えるのは、閉経前でエストロゲン受容体(ER)陽性疾患のみであることが、早期乳癌の70試験8万例の解析によって明らかになった。5月30日から6月3日まで米国シカゴで開催されている第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、英国University of OxfordのHongchao Pan氏が報告した。
早期乳癌患者において、肥満(WHO定義:BMI≧30kg/m2)は、予後不良と関連があり、その関連性はER陽性かどうか、卵巣機能が維持されているかどうかに、ある程度依存しているとされる。
Pan氏らは、早期乳癌の70試験の8万例について、BMI、ER受容体の状態、閉経状態、再発および死亡などのデータを収集し、Cox回帰解析により、年齢、手術のタイプ、試験での治療、HER-2、リンパ節転移、グレード、腫瘍径を補正して、肥満が乳癌死に与える独立した影響を評価した。
その結果、肥満の乳癌死に与える独立した効果は、閉経前のER陽性疾患(2万1719例)でのみ認められた。閉経前のER陽性乳癌患者における10年乳癌死亡率は、肥満(BMI≧30kg/m2)群で21.5%、正常(BMI 20-25kg/m2)群16.6%で、肥満群における正常群と比較した乳癌死の相対リスク(RR)は1.34(2p<0.00001、95%信頼区間:1.22-1.47)だった。
閉経後ER陽性疾患(4万190例)でも、肥満は乳癌死にある程度の影響を与えていた(RR=1.06、95%信頼区間:0.99-1.14)が、閉経前患者と閉経後患者における肥満の効果には有意な不均一性が認められた(p=0.00007)。
ER陰性疾患(1万9511例)においては、閉経前(RR=1.01、95%信頼区間:0.90-1.13)、閉経後(RR=0.99、95%信頼区間:0.89-1.11)ともに、肥満の乳癌死への明らかな影響は認められなかった(ER陰性全例RR=1.00、95%信頼区間:0.93-1.08)。
また、無作為化された日、手術のタイプ、グレード/腫瘍径/リンパ節およびHER2の状態、化学療法の有無、ホルモン療法の有無によって、肥満が予後に与える影響に、不均一性は認められなかった。
Pan氏らは、「早期乳癌患者では、肥満は、閉経前のエストロゲン受容体陽性患者においてのみ、乳癌死に独立して影響を与える強い予後因子であることが示された」と結論づけた。