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2014/06/02

ホルモン受容体陰性早期乳癌に対する化学療法中のゴセレリンによる卵巣不全の予防は妊孕性温存に有用 【ASCO2014】

中西美荷=医学ライター

 ホルモン抑制剤による卵巣周期抑制が、化学療法に起因する卵巣不全の予防と妊孕性温存に有用であることが、連邦政府研究として実施されたランダム化フェーズ3試験、POEMS(Prevention of Early Menopause Study)によって初めて示された。ホルモン受容体(ER)陰性早期乳癌に対する化学療法に、LHRHアゴニストのゴセレリンを併用することで、早期卵巣不全が減り、より多くの患者が妊娠、出産に成功したというもので、5月30日から6月3日まで米国シカゴで開催されている第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、米国Cleveland ClinicのHalle C.F. Moore氏が報告した。

 50歳未満の乳癌患者にとって、化学療法に起因する卵巣不全は大きな問題の1つとなっている。その発現頻度は、化学療法のレジメンや期間、患者年齢、性腺の活性に依存すると考えられ、これまでにも、ホルモン抑制剤によって卵巣周期を抑制することで早期卵巣不全(POF)を予防しようとする研究が行われてきた。しかし、その有用性について明確な結論は得られておらず、また妊孕性に対する治療成績については、ほとんど報告がない。

 POEMS試験の対象は、18-49歳のER陰性、閉経前ステージI-IIIAの早期乳癌で、治癒を目指した化学療法を実施予定の257例。年齢と化学療法レジメンで層別化した後、化学療法単独群(シクロホスファミドを含む化学療法、131例)または、ゴセレリン併用群(化学療法+ゴセレリン3.6mg月1回皮下注、化学療法開始前1週間から終了±2週間まで、126例)に無作為割付した。

 主要エンドポイントは、2年後のPOFで、POFの定義は6カ月間無月経かつ卵巣刺激ホルモン(FSH)の閉経水準への低下とした。副次エンドポイントは卵巣機能障害(3カ月間の無月経かつFSH、エストラジオールかつ/またはインヒビンBの閉経水準への低下)と妊孕性。探索的エンドポイントとして無疾患生存(DFS)、全生存(OS)についても評価した。解析対象は、妊娠、DFS、OSについては、不適格24例、同意撤回9例、子宮摘出/卵巣摘出6例を除いた化学療法単独群113例(年齢中央値38.7歳)、ゴセレリン併用群105例(同37.6歳)。POFについては、さらに2年追跡以前の死亡14例、FSHデータ不十分の69例を除いた化学療法単独群69例、ゴセレリン併用群66例。

 POF発現は化学療法単独群15例22%に対し、ゴセレリン併用群5例8%で、POFのリスクはゴセレリン併用によって70%有意に抑制された(p=0.04)。また卵巣機能障害も、化学療法単独群の22例33%に対して、ゴセレリン併用群は9例14%と有意に少なかった(p=0.03)。

 妊孕性については、化学療法単独群で12例(11%)が妊娠し、8例(7%)が出産、出生児数は12、ゴセレリン併用群では22例(21%)が妊娠し、16例(15%)が出産、出生児数は18という成績で、妊娠しえた患者(p=0.03)、出産に成功した患者(p=0.05)ともに、ゴセレリン併用群で有意に多かった。流産、中絶、出産合併症などの有害事象は両群で差がなかった。

 4年DFS率は、化学療法単独群78%、ゴセレリン併用群87%(p=0.04)、4年OS率は化学療法単独群82%、ゴセレリン併用群92%で、年齢と化学療法レジメン、ステージ補正後後も、ゴセレリン併用群で有意に良好だった(それぞれp=0.04、p=0.05)

 ASCO Cancer Communications CommitteeのPatricia A. Ganz氏は、「化学療法によるPOFリスクを、生存に影響を与えることなく有意に予防しうることが示された。 “Practice changing”な(実臨床を変える)成績だ」と試験を評価。Moore氏も、「閉経前早期乳癌の患者に対して化学療法を開始する際には、卵巣機能温存のために、こうした新たな選択肢があることを考慮し、患者と話し合うべきである」との見解を示し、保険償還にも期待を示した。

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