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知っておきたい骨転移

2013/09/24

第7回

骨転移の検査方法について

橋本伸之

骨転移の検査には、(1)現実に骨転移が疑われている場合、(2)骨転移は生じていないと推測されるが定期点検をする場合―と2パターンあり、方法が若干異なります。

 (1)のパターンでは実際に痛みなどの症状が出現し、あらかじめ骨転移部位が予測できますから、通常、最初にレントゲン撮影を行います。検査そのものは簡便に実施できますが、小さな病変は判断が難しく、読影に若干熟練が必要です。骨折や麻痺リスクとなるような大きな病変だと判断がつきやすいので、重症度を大まかに把握するためにレントゲン撮影は基本中の基本の検査となっています。

 さらに詳細に麻痺リスクを評価したり、放射線治療を考慮したりするなど多くの場合にはMRI検査が必要となります。MRIは脊髄などの神経組織も画像化され、圧迫の様子のほか、レントゲンでは発見できないような目立たない骨転移も映し出されます。CTはさらに詳細な骨の破壊の様子が観察できるため、どの程度体を動かしてもよい状態なのか、コルセットが必要かなど、骨折のリスクをより詳細に知る必要がある場合に実施しています。

 一方、通常の定期検診で骨転移をチェックする(2)の場合をスクリーニング検査といい、それぞれのがんの特徴によって、検査の進め方は個々に異なります。

 例えば、腫瘍マーカーが使えるがんの場合、その数値が上昇してきたら、主治医はどこかに腫瘍病変があると考え、その場所を突き止める検査を実施します。骨転移の頻度の高い肺がん、乳がん、前立腺がんなどでは、腫瘍マーカーの変動が骨転移発見のきっかけになることもしばしばあります。

 また、内臓転移をCTで検査するときにも、画像上に一部の骨の画像情報が含まれているため、骨転移が見つかるきっかけとなります。胸部のCT写真なら、胸椎とよばれる背骨の一部が撮像範囲に入りますし、胸付近の肋骨や胸骨、鎖骨、肩甲骨なども同時にチェックされます。腹部のCT画像には腰椎や骨盤などが含まれています。従って、とくに主治医から骨転移の検査と知らされていなくても点検されている場合が多いと思われます。同じようにPET検査が行われる場合にも、骨転移の情報が含まれますので、麻痺リスクとなる体幹部分の点検がなされているのが通常です。

 骨転移頻度の高いがんでは、少なくとも半年に一度は、これらの画像診断を他の内臓転移の点検を兼ねて受けておくのが望ましいでしょう。両大腿骨のレントゲンなどで荷重骨の点検がされていれば言うことなしです。点検の間隔は、腫瘍マーカーの値の変動によって早めたり、遅くするなどの調節をします。

 骨転移頻度の低いがんの多くでは、全身の骨を一回の検査でくまなく点検できる骨シンチが有用です。検査の頻度や回数は一概には言えないのですが、できれば1年に一回のペースで、術後5年くらいまで点検すると安心です。とくに、再発や他の部位にも転移が出現している場合は、骨転移の点検として受けておく方がいいでしょう。

 やや例外的なケースがあるのは、第2回で紹介した腎がんと肝細胞がんです。この2つのがんでは、骨転移の有力な画像診断である骨シンチ検査とPET検査において偽陰性(骨転移があるのに画像に映ってこないこと)という現象が起こることが多いのが特徴です。腎がんでは腫瘍マーカーも有用なものがありませんので、全身の骨転移の状態をチェックするためには、各部位のレントゲンやMRI,、CTを撮影する必要があり、画像検査が多くなる傾向があります。検査の頻度も多ければよいというものではありませんので、生活への影響度の大きい背骨や骨盤、大腿骨などを中心に点検するのが通常です。検査の偽陰性の問題は、この他にも多発性骨髄腫や甲状腺がんでの骨シンチにもよく起こることが知られています。

 このように、骨転移の検査は、それぞれのがんの特徴を踏まえて、負担が少なく簡便な方法にはじまり、徐々に精密な検査が行われます。検査は、偽陰性の問題や現実的に実施可能な回数の限度がありますので、残念ながら全ての骨転移を未然に発見できるとは限りません。ご自身で徐々に悪化する痛みに気付いたときには、早めに主治医に「骨転移は大丈夫でしょうか」と相談する姿勢が重要になってくるのです。ぜひ主治医の先生と協力して、骨転移の点検を受けていって下さい。

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橋本伸之 /著 1470円 文芸社
ISBN978-4-286-13355-3 、245ページ

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