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知っておきたい骨転移

2014/01/07

第15回

その他のがん―あなたも後部座席から助手席へ―

橋本伸之

 骨転移の頻度が比較的高いがん、特徴的な骨病変を生じるがんを第11-14回で紹介してきました。これ以外のがんでは、骨転移の頻度は決して高くはありません。概して、肺転移や肝転移、脳転移など、身体への影響がより大きい臓器にまず出現します。そのため、優先的にこれらの転移に対する治療が行われます。骨転移は、その後に出現することが多い傾向にあります。

 そのため、種々の検査が行われるときも、骨転移の優先度(注意)が低くなることは、やむを得ない状況です。しかしこのような場面においても、基本的な骨転移への注意点は何ら変わることはありません。今までにないような痛みが生じているときには、主治医に「骨転移の可能性はありませんか」と尋ねてみることを忘れないようにして下さい。

 主治医は、全身状態を把握し、とくに優先すべき事項に注意しながら、あなたの治療にあたっています。車の運転で言えば、ハンドルを握って人通りの多い繁華街の道を走っているようなものです。交差点のように特に注意が必要な箇所とともに、いつ何時も飛び出しはないか、不測の事態は起こらないか、注意深く走らなければなりません。今日の骨転移診療は、衝突回避システムを搭載した次世代のクルマにはまだなっていません。また、残念ながら骨転移に対する経験の少ないドライバーもいるかもしれません。

 カーナビが普及する前の世代の方なら、助手席の人は地図を開いたり、料金所で財布を取り出したり、カセットテープを入れ替えたり、眠くならないように積極的に会話をしたり、といろいろ役割があったのを覚えておられると思います。ひと通り骨転移の知識をつけられた皆さんは、助手席に座っているのと同じです。ドライバーのアシスト役が果たせるようになっています。

 ときおり「骨転移のことも忘れないで下さいね、先生」と、負担が大きくなりがちなドライバー(主治医)の女房役をするのです。旧式のクルマでも、両者でコミュニケーションをとりながら進めばより安全に走ることができたあの頃に、今の骨転移診療では戻る必要があります。そうです、まだ旧式なのです。

 言い換えると、ドライバーとの協力関係によって危険に気がつきさえすれば、回避することができます。骨転移の代表的なスクリーニング検査である骨シンチは、腎がん・肝がん・多発性骨髄腫・甲状腺がんなど一部のがんを除いて、大多数のがんにおいて有用です。病変は一般的に溶骨型もしくは混合型が主体で、PET検査やCT、MRIも有用です。こうした検査を行うことに気がつくことが大切です。一度放射線治療を終えると再発するまでの期間は長く、治療効果が高いことも、気がつきさえすれば危険(骨折や麻痺)を回避できることの医学的根拠となります。

 他の臓器への転移も生じている中で、麻痺の恐れが高まった場合に、骨転移に対する手術を行うこと自体がさらに体力を消耗させかねないため、手術を断念せざるを得ないことも多くなります。このような場合では、緩和ケアの充実を図り、少しでも痛みや麻痺の不自由を軽減させる対処を行なうことになりますが、心身への負担はさらに大きくなってしまいます。

 骨転移を生じにくいがんにおいても、やはり人間らしい生活を送る観点で骨転移は重要な問題です。病状が重篤になってからの骨転移の悪化は、毎日の生活の質をさらに大きく低下させてしまうことにつながります。

 ぜひあなたも後部座席から助手席へ。いつもと違う痛みや違和感などに一番早く気がつくのはあなたですし、あなたや家族しか気がつくことが出来ない場合もあります。主治医と一緒に骨転移に注意しておくことが、大きな危機を回避することにつながるのです。

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橋本伸之 /著 1470円 文芸社
ISBN978-4-286-13355-3 、245ページ

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