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知っておきたい骨転移

2013/09/03

第4回

骨転移の症状 Part.1  痛みと病的骨折

橋本伸之

 進行期のがんと言えども生き生きと活動的に過ごせるように、というのが骨転移診療の目指す究極の目標です。病状の重さと矛盾するように感じられるかもしれません。骨転移では骨髄がん症や高カルシウム血症といった、末期になって生命に危険の及ぶ問題もまれに起こりますが、療養生活で注意すべきなのは主に痛み骨折麻痺の3つで、この3つともにいずれも生命の危機とは直結しないものです。

 転移というと重苦しく、「考えたくもない」という気持ちになってしまうと思います。ただ、数ある転移の中でも骨転移に限っては、「命の問題と切り離して考える」という姿勢で臨むことができるのです。これは、内臓の転移とは大きく異なる点で、骨転移の特徴と言えるものです。だからこそ、がんと診断を受けたときから、恐れずにちょっとした骨転移の予備知識を身につけておいて下さいというのが私の主張です。少しずつお話していきますが、骨転移は現実問題になってから考えるという姿勢でいると、生命には危険はないものの生活の質を大きく低下させる下半身不随という重大な事態を避けられなくなってしまうのです。

 本題に戻りましょう。

 先程述べたように、骨転移の代表的な症状は、痛み・骨折・麻痺の3つです。骨にがんが飛び火して正常な骨を壊しはじめると、多くの場合、その骨の部分に痛みが生じてきます。はじめはちょっとした違和感から始まりますが、徐々に痛みに変わり、そのうち骨に力がかかったときだけ生じていた痛みが、ちょっとした動作でもはっきりとした痛みに変わっていくことが多いでしょう。

 痛みの出方にも個人差があり一様ではありませんが、がんは進行性の病気です。とくに「徐々に悪化してくる経過」が重要です。そして「週単位もしくは月単位で悪化する」のがもう一つのポイントです。2、3年前から痛くなったり良くなったりを繰り返すようなら、加齢性変化(つまり年を取ったこと)による痛みが想定され、時間単位や日単位で急速に悪化するものは炎症などの急性疾患が予想されます。

 本来、痛みは人間のからだを守る防御システムの一つです。痛みが出てきたときには無理にからだを動かそうとせず、痛みの出ないよう静かにしておくのが原則です。無茶はしていないにもかかわらず、悪化傾向を示す痛み、週単位から月単位の時間経過で生じる骨の痛みは要注意です。がんの治療を担当してくれている主治医の診察を早めに受けるようにしましょう。

 ご自宅近くの整形外科医院を受診するのも一つの方法です。その際は、「平成○年に○○がんの治療を受けていて、骨転移のことを心配しています」などと、がんの治療歴があることをはっきりと伝えて下さい。当面の痛み止めを処方してもらったり、治療を急ぐような事態が生じていないかについて点検してもらえるなど、大まかな情報は得られると思います。

 ただ、近日中にがんの主治医の診察を受ける手配をなるべくしておくようにしましょう。痛みの段階であれば、後述する放射線治療のみで治療できることが多いので、結果的に身体的負担を小さくすることができます。

 2つ目の代表的症状である骨折は、上記のような痛みが出ているにもかかわらず我慢していると、あるとき日常のちょっとした動作で生じる(これを病的骨折といいます)のが通常です。骨折と言っても、骨折部にがんが居座っていて骨が治るのを妨げますので、ギプスによる治療は残念ながら効果がありません。多くの場合、手足に生じた病的骨折は手術的治療が必要になります。また背骨は、細長い手足の骨とは異なり、真っ二つにポキッとは折れませんが、押しつぶされたような骨折(これを圧迫骨折といいます)を起こしやすいのです。この場合も、少なくとも放射線治療によって、居座っているがん細胞を退治しないと、正常な骨の修復は期待できません。

 骨折が起こると、治療の負担は随分大きくなってしまいますから、痛みが悪化していることに気づいた時点で、しっかりと主治医にかかりましょう。

 からだを強打するようなアクシデントがあった場合は、前兆となる痛みが出ていないケースも想定されます。実際、このようなアクシデントをきっかけに骨転移が発覚することもあります。残念ながら全ての病的骨折を回避することはできませんが、少なくともしつこい痛みを感じたときに「もしや骨転移では?」と気づくことが大切です。

 最初の痛みと骨折については、多くの場合、対処が可能です。骨の基本的な機能は、体重を支えることであり、内臓と比べるととてもシンプルです。骨折治療に用いられる様々なインプラントや人工関節があり、とくに手足の病的骨折なら大部分は元の強度を回復させることが可能です。

 次回は、最も重大な問題である麻痺についてお話しします。

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橋本伸之 /著 1470円 文芸社
ISBN978-4-286-13355-3 、245ページ

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