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できていますか?倫理的問題の多職種共有

2014/12/10
根本康子

 先日、がん研究会有明病院主催の臨床倫理に関する研修に参加してきた。参加者は、東京都内のがん診療連携拠点病院のトップマネージャーや職員教育に携わる職員で、この研修で学んだことを自施設で広めることが求められていた。

 研修では、臨床倫理の考え方や臨床倫理について組織としてどのように取り組むべきかについての講義と、事例検討が行われた。今まで、自部署のスタッフ教育の一環として、「看護師の倫理綱領」を題材に勉強会をしたり、臨床の倫理的問題について話し合う機会があったが、副看護部長の立場で、改めて倫理とは何かを学び、組織としてどう倫理に向き合い、患者の意思決定を支えるべきかについて考える機会を得たことは、大変有意義だった。

 当院にも倫理を扱う場として、臨床研究の是非を審議する「倫理審査委員会」や、「臨床的倫理問題検討委員会」「病院倫理委員会」「医療内容事前審査委員会」「脳死判定委員会」などがある。さらに、このような公の場で検討する事例以外にも、倫理に関わる課題は日常のありとあらゆる場面にあふれている。

意識障害患者の治療方針に納得いかず
 副看護部長になって、自分が担当する部署の師長から、患者や家族にまつわる様々な報告、相談を受けるようになり、倫理的な判断を伴う事例も多い。副看護部長として一歩踏み込んだアドバイスができるようになりたいと思うことも出てきた。先日も、師長からある患者の報告を受けた。詳細には紹介できないが、大筋はこんなことである。

 意識障害のある患者さんに対して、医師は外科的な治療が必要であると判断し家族に説明した。家族は自ら希望して他院のセカンドオピニオンを受けた。結果は当院の診断、治療方針と同様であったが、最終的には家族(キーパーソンではない)の希望で保存的治療を選択することになった。師長からは「その治療方針は理解できない」と報告があり、私自身もその治療方針が患者にとって最善なのかどうか、納得がいかなかった。師長から報告を受けた時、私も師長と同意見であることを伝えたが、具体的なアドバイスができず、その後も副看護部長としてどのように関わったら良いかと考えていた。

 先の研修で、臨床倫理について組織で取り組むためには、組織の構成員すべてがそれぞれの立場で患者・家族の最善を考える文化が必要だということを学んだ。今回の事例の治療方針決定のプロセスには医師と家族だけが関わっており、看護師やその他の医療従事者は関与しておらず、看護師に葛藤を生んでしまった。状況について関係者の理解が一致した上で合意がされたのだろうかと疑問を持たざるを得なかった。

著者プロフィール

高崎由佳理(杏林大病院副看護部長、左)●たかさき ゆかり氏。1990年杏林大病院入職。産科病棟師長、外来師長などを経て、2014年から現職。12年国際医療福祉大大学院修了。助産師。根本康子(杏林大病院副看護部長、右)●ねもと やすこ氏。1987年杏林大病院入職。2004年手術部師長、14年から現職。13年国際医療福祉大大学院修了。

連載の紹介

新米副看護部長が行く!@杏林大病院
2014年4月に副看護部長に就任した二人の筆者が、看護部での奮闘の様子を交互に綴るエッセー。診療報酬制度など病院経営に直結する話題から、人材育成に関することまで、看護管理全般の話題に幅広く切り込みます。

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