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点滴に異物混注! 憎むべきは備品管理にあらず

2016/10/06
薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 横浜市神奈川区の大口病院(85床)で入院患者の点滴に異物が混入され2人が中毒死した事件が殺人事件として捜査されているというニュースが先日流れました。しかも、7月から48人の死亡退院患者が出ているということで、院長も「やや多い」とコメントしており、今回の事件と死亡退院患者増加の関連も疑われています。神奈川県警は院内で点滴に消毒液が混入された可能性が高いとみているそうで、院長は取材に「内部の関係者ということも否定できない」と答えています(ニュース記事参照)。
 
病院には当然置いてある「逆性せっけん
 今回混入されたとされる消毒液は、逆性せっけんといわれる物質です。普通のせっけん(僕らが体洗ったりするときに使うやつ)は、水に入ると負の電荷を帯びて陰イオンとして働きますが、逆性せっけんは陽の電荷を帯びるので逆性と呼ばれています。歴史は古く、1935年にDomagkにより、第四アンモニウム塩が細菌類に対して高い殺菌効果を示すということが報告されたのが始まりです(G. Domagk. Dtsch med Wochenschr 1935; 61(21): 829-32.)。ドイツ語の論文なので、原文を読みたい人は気合を入れてください…。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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