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第88回 認知症と運転免許更新(3)
認知症ではないと診断した患者が事故を起こしたら医師は責任を問われる?

2017/02/17

 今回は、3月12日施行の改正道路交通法の中でわれわれ臨床医に関係する事柄について解説するほか、今後注意しなければならない点について述べていきたいと思います。施行まで1カ月を切る段階にきていますが、施行に係る細部に関して十分な情報提供がないのが実情です。以下の解説は私が知り得ている範囲の記述になることをご理解ください。この1カ月間で変わる可能性もあるかと思います。

認知症と診断された場合には運転免許の取消しとなる
 この場合の認知症とは、アルツハイマー型認知症ならびに血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(いわゆるピック病)の4疾患に該当します。表1に「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」(法第90条第1項第1号の2及び法第103条第1項第1号の2関係)の中で認知症に関する部分を抜粋して示しました。認知症と診断された場合、運転免許の取消し、返上などはすでに2001年の道路交通法の改正によって規定されていたことなのですが、われわれ医師はほとんどこの事実を知らなかったかと思います。臨床の現場では、認知症と診断した際には免許更新に関連した診断書提出の有無に関係なく、患者さんならびに家族に法律によって自動車の運転をしてはならないこと、運転免許の取消しが決められていることを伝えることが必須となります。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

プライマリケア医のための認知症診療講座
2020年、患者数が325万人に達するといわれる認知症。患者数の増加に伴い、認知症の診療におけるプライマリケア医の役割が大きくなっています。著者が遭遇した実際の症例を紹介しながら、認知症診療の「いろは」を解説します。
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 Q&Aの数は全部で65個。どこから読んでも理解できるよう、1つのQ&Aだけで解説が完結する形に再編集しました。ぜひ日常診療にご活用ください。(川畑信也著、日経BP社、4644円税込み)

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