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スパイダーマン?

2017/08/08
今 明秀(八戸市立市民病院)

 25歳男性、精神疾患で通院歴あり。ゴールデンウイークの昼だった。高層マンション55階から男性が墜落したという119番通報が消防に入電。救急隊はCPA対応で現場に向かった。

 マンションの玄関を入ってすぐ、ホールは吹き抜けている。男性は墜落途中で3階部分の金属ワイヤー防護ネットを突き破り(ネットを支えている鉄柱もへし折り)、2階部分の鋼線入り強化ガラスも割って、アルミフレームに背部を引っ掛けて止まっていた。

 救命救急センターに知らされていた消防からの第一報は、「55階から墜落した男性が運ばれてくる」というものだった。私を含めてナースも、55階からでは生きているはずはなく、人の原型を保っていることさえ危ういと思いこんでいた。男性の乗った救急車がERに到着し、車内から男性がオレンジ色のバックボードに固定されて降ろされた。「おかしい。CPRがされていない」

 私は男性に話しかけた。すると目が開く。さらに「助けて」と口にするではないか。

著者プロフィール

今 明秀(八戸市立市民病院院長)●こん あきひで氏。1983年自治医科大学卒業。へき地診療を5年、外科を8年、外傷救急を6年修練。青森県ドクターヘリ スタッフブログ「劇的救命」(http://doctorheli.blog97.fc2.com/)を更新中。

連載の紹介

救急いばら道
八戸市立市民病院の院長であり、救命救急センター所長、臨床研修センター所長でもある今明秀氏が、ドクターヘリやドクターカーを擁する同病院救命救急センターでスタッフと日夜奮闘する様子を、克明にお伝えします。

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