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呼吸リハビリテーションの誤解

2018/05/11
倉原優(近畿中央胸部疾患センター)

Medic Art より

 当院では、患者さんに「呼吸リハビリテーション」をよく適用しています。

 私が呼吸器内科医になった頃、「このCOPDの患者さん、呼吸リハビリしてもらおうか」と指導医に言われ、「呼吸法を教えてもらうリハビリですよ」と患者さんに誤った説明をしていたことがあります。

 今でも非呼吸器科医のドクターにはよく誤解されていますが、呼吸リハビリとは、呼吸の仕方(COPDの場合は口すぼめ呼吸など)を教えるリハビリではありません。もちろん、そういった呼吸指導も含まれてはいますが、本来、呼吸リハビリとは「呼吸器の病気によって生じた障害をもつ患者さんに対して、機能を回復・維持させ、患者さん自身が自立できるように継続的に支援していくための医療」と定義されています。

 リハビリですから、運動療法なくしてはその効果を達成できません。

 大腿四頭筋などの下肢筋力トレーニング、呼吸に必要な筋肉の柔軟性を保持することが主体であり、「こうやって息を吸うんですよ」と教えるだけのモノではありません。

 そのため、非呼吸器科のドクターに説明するときは、「呼吸リハビリ」と言うだけでなく「呼吸器疾患がある患者さんへのリハビリ」と言い換えて説明しています。

 なお、代表的な呼吸器疾患であるCOPDに対する呼吸リハビリは、呼吸困難の軽減と運動耐容能の向上に関して、「エビデンスA」で評価されています1)。ホームリハビリテーションを積極的に実施することで、リハビリセンターベースと同等の効果をもたらすという報告もあります(2)(ただし日本とはリハビリの実施についてかなり政策に差がある報告です)。

図 自宅でのリハビリの有効性2)(文献より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、インフェクションコントロールドクター。

連載の紹介

倉原優の「こちら呼吸器病棟」
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する医師。日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して倉原氏が感じたことを、呼吸器領域ならではのtipsを交えて語ります。呼吸器診療の息遣いが垣間見えるブログです。

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