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学会リポート◎日本外科学会2018・膵癌
切除不能膵癌のconversion surgeryで見えてきた方向性
一定の基準に基づいた治療成績の議論が必要

2018/04/25
森下紀代美=医学ライター

司会の弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座袴田健一氏(左)と東北大学大学院医学系研究科外科病態学消化器外科学分野の海野倫明氏(右)

膵癌に対する外科的治療は、切除可能(Resectable:R)膵癌、切除可能境界(Bordeline resectable:BR)膵癌へと適応が拡大されてきた。さらに近年では、新規化学療法や化学放射線療法が大きく進歩していることから、切除不能(Unresectable:UR)膵癌でも、down stageにより切除に移行するconversion surgeryの症例が増えつつある。

 ただし、UR膵癌に対するconversion surgeryについては、どのようなUR膵癌で可能であるのか、どのような治療で最も高い奏効率が得られ、手術に移行できるのか、UR膵癌からBR膵癌に移行しない場合の手術の適応基準はどうするかなど、議論が必要な点が多い。

 4月5~7日に東京で開催された第118回日本外科学会定期学術集会のワークショップ「UR膵癌に対する治療戦略」(司会:弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座・袴田健一氏、東北大学大学院医学系研究科外科病態学消化器外科学分野・海野倫明氏)では、各施設の治療戦略の検討結果が報告された。その結果、conversion surgeryで治療成績が期待できるとする見解のばらつきが減り、一定の成績が得られていることが示され、今後は一定の基準を設け、それに基づいて切除を行った場合の治療成績の議論が必要であることが指摘された。

 なお、日本膵臓学会により発刊された「膵癌取扱い規約 第7版」(2016年7月)の切除可能性分類では、「局所進行によるURは大血管浸潤を伴うため肉眼的に癌遺残のあるR2切除となる可能性が高いものである」とされ、遠隔転移の有無により、局所進行の「UR-LA」と遠隔転移ありの「UR-M」に分類されている。

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