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NEJM誌から
ボセプレビルの追加でHCVジェノタイプ1感染者のSVR達成率が上昇
SPRINT-2とRESPOND-2の結果

 現在の標準治療が奏効しにくいジェノタイプ1C型肝炎ウイルス(HCV)感染者に対して、新規HCVプロテアーゼ阻害薬ボセプレビル(Boceprevir)を標準治療に追加し、有効性と安全性を調べた2件のフェーズ3試験(SPRINT-2RESPOND-2)の結果が、NEJM誌2011年3月31日号に同時掲載された。いずれの試験においても、ボセプレビルを追加した群の方が、標準治療のみの群に比べて、持続的ウイルス学的著効(sustained virological response:SVR)達成率が有意に高かった。

 現在、慢性HCV感染者に対する標準治療はペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリンの併用となっている。だが、HCVジェノタイプ1感染者の治療は難しく、SVR達成率は50%を下回る。

 ボセプレビルは経口投与可能な強力なHCVプロテアーゼ阻害薬。耐性ウイルスの出現を最低限に抑えるために標準治療に追加する形で臨床開発が行われた。

治療歴のない非黒人患者ではSVRが約7割に ~SPRINT-2~
 1本目の論文は、治療歴のないHCVジェノタイプ1感染者を対象に、標準治療のみを適用した場合と、標準治療にボセプレビルを加えた場合の有効性と安全性を比較する二重盲検試験「SPRINT-2(serine protease inhibitor therapy 2)」の結果を報告したものだ。

 米Cedars-Sinai医療センターのFred Poordad氏らが、主に北米と欧州で、18歳以上で血漿HCV RNAレベルが1万IU/mL以上の患者を1099人(非黒人が940人、黒人が159人)登録した。

 全員にPEG-IFN α-2b(1.5μg/kgを週1回)とリバビリン(体重に応じて600~1400mg/日を朝夕に分けて服用)を4週間投与し(リードイン期間)、その後、以下の治療を行った。

 (1)グループ1(対照群):偽薬とPEG-IFN+リバビリンを44週間投与(リードイン期間と合わせた治療期間は48週)。

 (2)グループ2(反応に応じて治療を決定するグループ):ボセプレビル(800mgを1日3回)とPEG-IFN+リバビリンを24週間投与。リードイン期間を含む8週目以降24週目までの期間にHCVのRNAが一度も検出されなかった患者は、28週(ボセプレビル投与開始後24週)時点で治療を終了。8週目から23週目までに一度でもRNAが検出された患者には、ボセプレビル投与終了後20週間、偽薬とPEG-IFN+リバビリンを投与。

 (3)グループ3(治療期間固定群):ボセプレビルとPEG-IFN+リバビリンを44週間投与。

 リードイン期間を含む24週時の評価でHCV-RNAが検出された患者については、標準的な無益性の基準に基づいて治療失敗と判定し、治療を中止した。

 全員を72週まで追跡し、割り付けられた治療を1回以上受けた患者を分析対象として、偽薬群とボセプレビル群のSVR(投与終了後から24週までの持続的なHCV RNA陰性化)達成率を比較した。

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