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テオフィリンを初回から長期処方して副作用が出現!

2011/04/26

<処方せんの具体的内容は>

60歳代の男性
<処方 1> 他院循環器科
テオドール錠100mg
4錠
1日2回
朝夕食後
63日分
他に定期薬として循環器系薬を服用中であるが、記載は省略した。
<処方2> 当該呼吸器科
パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入
1本
1日2回
朝夕1回吸入

<何が起こりましたか?>

・他の病院の循環器科から初回でテオドール錠<テオフィリン>400mg/日が63日分処方された。だが、数日後に副作用と思われる症状を訴え、呼吸器科のある本病院に相談しにきた。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は初診患者で、処方1を調剤した薬剤師に「テオフィリンの副作用が出ている可能性があるから、専門の呼吸器科を受診するよう指示された」と言って来院した。
・詳細を確認したところ、患者は息苦しく咳が出ていたため、以前から受診している循環器科で相談。少し喘息気味と診断され、いつもの定期薬に追加してテオドール錠を処方された。患者は2カ月に1回しか循環器科を受診していないこともあり、定期薬と同じように、初回服用のテオドール錠も63日分処方されていた。
・テオドール錠を服用し始めてすぐに喘息様症状は改善したが、服用3日目から頭痛、吐き気、足の痙攣がひどくなったことを訴えた。この症状がもし副作用であればもうテオドール錠は服用したくないとの申し出であった。

<どのような状態になりましたか>

・患者は頭痛、吐き気に加え、痙攣も起きていることから、テオフォリン服用による副作用が発現している可能性が否定できないと判断した(ただし、テオフィリンの血中濃度測定は行わなかった)。
・患者は喘息まではいっていないが、近い症状になっており、パルミコート200μgタービュヘイラー<ブデソニド>を処方した<処方2>。
・その後、この患者はパルミコート吸入で症状が落ち着いている。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・非専門の循環器科から初回処方薬として、テオドール錠が長期日数で処方された。

<二度と起こさないために今後どうするか?>

・テオフォリンは有効血中濃度域の狭い薬剤であり[文献1)](一般にテオフィリンの有効血中濃度は5~20μg/mL[文献2)])、テオドール医薬品添付文書の重要な基本的注意として、テオフィリンによる副作用の発現は、テオフィリン血中濃度の上昇に起因する場合が多いことから、血中濃度のモニタリングを適切に行い、患者個々人に適した投与計画を設定することが望ましいとある[文献3)]。そのため、テオフィリンを初回に長期で処方すべきではなかったと考える。

<その他特記すべきこと>

・中毒症状を発現するテオフィリン血中濃度について
 テオフィリンの血中濃度が20μg/mLを超えると図に示すような中毒作用が発現することがある(図1)[文献2、4)]。有効血中濃度は個々の患者で異なり、5μg/mL付近でも有効な場合、20μg/mL以下でも副作用が発現する場合があるため、臨床効果を十分観察しながら適切な投与量(有効血中濃度)を決定する必要がある[文献1)]。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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