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Arch Intern Med誌から
急性膵炎入院時と24時間後のBUN値は院内死亡の予測因子

 急性膵炎の症例の多くは軽症だが、最大で20%の患者が命にかかわる状態を経験する。米Harvard大学医学部のBechien U. Wu氏らは、3件のコホート研究のデータを2次分析し、入院時と24時間後に測定した血中尿素窒素BUN)値が院内死亡の予測因子であることを明らかにした。さらに、これら2回の測定値を組み合わせた院内死亡リスク層別化アルゴリズムを作成し、Arch Intern Med誌2011年4月11日号に報告した。

 ICUでの治療が必要となる患者のほとんどが、受診から24~48時間で一般病棟からICUに移されていることから、最初の24時間の治療とそれに対する患者の反応が転帰に影響を及ぼすと考えられる。だが、急性膵炎患者の評価に有効なバイオマーカーを利用した臨床スコアリングシステムは確立されていない。現行のガイドラインは、予後予測にAPACHE IIスコアの適用を推奨しているが、より簡便で膵炎特異的な予後予測アルゴリズムができれば、医師の治療方針の決定を容易にするはずだ。

 急性膵炎では、入院当初に行われる治療の1つが十分な輸液で、血管内容量の代替マーカーとしてヘマトクリットやBUN値の測定が行われている。著者らは先に米国の69病院で後ろ向き研究を行い、ヘマトクリット値よりも複数回測定したBUN値の方が急性膵炎患者の死亡の予測能力は高いことを明らかにしていた。

 そこで今回は、BUNの連続的な測定値を利用した客観的な急性膵炎評価法の開発を目指した。最初に、BUN値が死亡を予測することを確認し、複数回のBUN測定の結果を利用した予後予測アルゴリズムを作成、その精度を確認した。

 用いたのは、同時期に行われた以下の前向きコホート研究のデータだ。Brigham and Women’s Hopital(BWH)で05年6月から09年5月まで行われたMarkers of Severity in Acute Pancreatitis study、Dutch Pancreatitis Study Group(DPSG)が04年3月から07年3月まで行ったProbiotic Prophylaxis in Predicted Severe Acute Pancretatitis(PROPATRIA)試験、Pittsburgh大学Medical Center(UPMC)で03年6月から07年9月まで行われたSeverity of Acute Pancreatitis Study(SAPS)の3件からデータを抽出した。

 3件とも同じ基準を用いて急性膵炎を診断しており、入院から24時間以内に見られた最も悪い測定値や所見を用いてAPACH IIスコアを求めていた。

 今回は3件の研究に登録された患者の中から、入院時と24時間(±6時間)の時点を含む2回以上、BUNが測定されていた人々を分析対象とした。

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