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関節リウマチ患者における抗TNFα薬投与歴とリンパ腫発生リスクは無関係

2007/11/13
宇田川久美子=メディカルライター

 関節リウマチ(RA)患者では、一般人口に比してリンパ腫の発生率が高率であることが知られている。さらに、抗TNFα薬の投与が、そのリスクに影響するとの報告もある。しかし、大規模患者レジストリ、CORRONAデータベースに収載された1万2000例余のRA患者データを解析した米セントコア社のCallegari氏らは、抗TNFα薬使用歴のある患者コホートにおけるリンパ腫の発生率は、RA患者全体のコホートと変わりなかったことを報告した。11月9日、米国リウマチ学会・学術集会のポスターセッションで発表した。

 本検討の対象は、1999年1月~2005年12月にCORRONAデータベースに登録され、リンパ腫に関する情報が記載されたRA患者1万453例である。これらのうち、いずれかの抗TNFα薬投与歴のある患者は50.8%(5311例)、抗TNFα薬のなかでも特にインフリキシマブ(IFX)の投与歴のある患者は23.5%(2454例)だった。また、92.1%(9630例)の患者にステロイドを含めた免疫抑制薬の投与歴があった。

 リンパ腫発生率は全体で0.105%(11例/1万453例)だった。その内、いずれかの抗TNFα投与歴のある患者群では0.113%(6例/5311例)、IFX投与歴のある患者群では0.112%(3例/2454例)だった.これらは抗TNFαの投与歴のない患者群におけるリンパ腫発生率0.097%(5例/5142例)と比較すると有意差を認めなかった。また、免疫抑制薬併用の有無による差も認められなかった。

 次にCallegari氏らは、患者の年齢、性別、人種について補正の上、米国の一般人口におけるリンパ腫の発生率を基準値として、相対リンパ腫発生リスク(SIR)を求めた。

 その結果、全コホートにおけるリンパ腫発生予想値は実際の発生数より少ない5.72例となり、SIRは1.923[95%信頼区間、0.960-3.440]と計算された。同様に、抗TNFα薬投与歴のあるサブコホートのSIRは2.081[0.764-4.530]、IFX投与歴のあるサブコホートのSIRは1.853[0.382-5.414]と計算された。

 すなわち、RA患者では抗TNFα薬、特にIFXの投与によってリンパ腫発生リスクが高まるという事実は認められなかった。Callegari氏らは、「確実な結論を得るためにも、より長期にわたる追跡を続けたい」と述べた。

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