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糖尿病患者におけるうつ症状は正常者よりも2.6倍多い

2011/05/24

九州大学の岩瀬正典氏

 わが国では、糖尿病患者におけるうつ症状は正常者よりも2.6倍多いことが報告された。福岡県糖尿病患者データベース研究FDR3)により明らかになったもので、九州大学の岩瀬正典氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会JDS2011)で発表した。

 糖尿病患者がうつ症状を合併すると、QOLが低下し、自己管理不能、血糖不良のため合併症が増加、最終的には死亡率が増大することが危惧される。岩瀬氏らは、こうした問題認識のもと、わが国の実態を明らかにする必要があるとし、2型糖尿病患者のうつ症状について、一般の地域住民の正常耐糖能者と比較検討した。さらに、糖尿病患者のうつ症状と関連する因子についても検討した。

 対象は、福岡県久山町在住の正常耐糖能者1722人(正常群)と福岡県内の日本糖尿病学会認定研修病院と認定専門医のクリニック(合計16施設)に定期通院中の2型糖尿病患者4402人(糖尿病群)。糖尿病群はすべて朝食前採血を実施した。

 うつ症状の評価には、Center for Epidemiological Studies Depression scale(CES-D)を用いた。

 その結果、うつ症状が確認できたのは、正常群で69人、糖尿病群で393人だった。岩瀬氏によると、頻度としては海外の報告に比べて低値だった。ただし、ロジスティック回帰分析の結果、うつ症状は糖尿病患者の方が正常者より2.6倍多く認めることが分かった(正常群に対するオッズ比2.64、p<0.0001)。

 また、糖尿病患者のうつ症状と関連する因子を探索したところ、一般的にうつ症状と関連するとされる女性、若年、タバコ、低身体活動量、短い睡眠時間に加え、末梢神経障害(両足のしびれ)や虚血性心疾患などの合併症と重症低血糖がうつ症状と強く関連していた。

 演者らは今回の研究で、「糖尿病患者におけるうつ症状は正常者よりも2.6倍多いことが明らかになった」と結論。糖尿病患者がうつ症状を合併すると、病状の悪循環に陥り、最終的に死亡率の増大につながるとし、うつ症状への対応の重要性を訴えた。

(日経メディカル別冊編集)

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