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BMJ誌から
心筋梗塞後のアスピリン投与、PPI併用で心血管リスクが上昇

 初回心筋梗塞後にアスピリン治療を受けている患者がプロトンポンプ阻害薬PPI)を併用すると、心血管イベントリスクが1.5倍になり、全死因死亡リスクも有意に上昇することが、デンマークCopenhagen大学のMette Charlot氏らが行った大規模後ろ向き研究で明らかになった。H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)が併用された患者にはリスク上昇は認められなかった。論文は、BMJ誌2011年5月21日号に掲載された。

 抗血栓薬とPPIを併用すると抗血栓薬の効果が十分に得られなくなり、心血管イベントリスクが上昇するという可能性が示されて以来、クロピドグレルとPPIの併用、アスピリンとPPIの併用のリスクに高い関心が寄せられてきた。

 心血管イベントの予防を目的としてアスピリンを使用する患者の中には、消化管に対する有害事象を予防するためにPPIを併用する人が多いことから、著者らは、デンマーク国民を対象とする大規模研究を行うことにした。

 同国の患者登録、処方記録、死亡登録など4つのデータベースを利用して、初回心筋梗塞の症状発現から30日間生存しており、退院から30日以内にアスピリンの処方を受け、その後も抗血栓薬としてアスピリン単剤投与を受けてきた患者で、1年後まで追跡が可能だった人々を探した。処方記録を利用して退院から1年間のPPI、H2ブロッカーなどの使用の有無を調べた。クロピドグレルが適用された患者は除外した。

 主要アウトカム評価指標は、心血管死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院を合わせた複合イベントとし、Cox比例ハザード分析や、傾向スコアマッチングを行ったCox比例ハザード分析などを行った。

 1997~2006年に、デンマークに存在するすべての病院のいずれかに、初回心筋梗塞で入院した30歳以上の患者は9万7499人だった。条件を満たした4万9452人のうち、1万9925人が30日以内にアスピリンの処方を受けていた。うち4306人(21.6%)に1回以上PPIが処方されており、661人(3.3%)にはH2ブロッカーが1回以上処方されていた。

 アスピリン治療を受けていた1万9925人中3366人(16.9%)が、複合イベントを経験していた。全死因死亡は2293人(11.5%)だった。

 時間依存型Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行ったところ、PPI非使用群と比較したPPI使用群の複合イベントリスクは1.46倍(ハザード比1.46、95%信頼区間1.33-1.61、P<0.001)になった。

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