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BMJ誌から
甲状腺自己抗体を持つ女性は早・流産のリスクが高い
レボチロキシン投与でリスクが半減か、メタ分析の結果

 甲状腺機能は正常だが甲状腺自己抗体を保有する妊婦は、自己抗体を持たない妊婦に比べて、流産リスクが約4倍、早産リスクが約2倍になることが、英London大学Queen Mary校のShakila Thangaratinam氏らが行ったメタ分析で明らかになった。これらの妊婦にレボチロキシンを投与した試験の分析では、リスクが半減することが示唆された。論文はBMJ誌2011年5月14日号に掲載された。

 妊娠24週未満の流産は妊婦の5人に1人に発生し、24週から37週までの早産は6~10%の妊婦に見られる。新生児死亡の84%は早産に起因するもので、特に妊娠28週までの早産の場合、死亡リスクが高い。

 これまでにも、甲状腺自己抗体の存在が流産と早産の危険因子であることを示した報告はあった。生殖年齢の女性の甲状腺自己抗体保有率は、6~20%と報告されている。流産を繰り返した女性を対象に調べた研究では、甲状腺自己抗体保有率は17~33%、妊娠を望んでいるのに1年以上にわたって妊娠できない女性の場合には10~31%との報告があった。

 甲状腺自己抗体が甲状腺の機能低下を引き起こせば、妊娠や出産に悪影響が及ぶと考えられる。甲状腺機能が正常であっても、自己抗体、特に甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が存在すると妊娠の転帰は不良となり、流産や早産、さらには産児の神経発達に有害な影響が及ぶ可能性が示されている。

 そこで著者らは、系統的レビューとメタ分析を実施し、甲状腺機能は正常で自己抗体を保有する妊婦の流産と早産のリスクを調べた。さらに、レボチロキシンを投与することでこれらの妊婦の流産や早産を予防できるかどうかを推定した。

 文献データベース(Medline、Embase、コクランライブラリ、SCISEARCH)に2011年までに登録された研究の中から、甲状腺機能が正常な女性を対象に、甲状腺自己抗体の存在と妊娠の転帰の関係を調べた研究を選出、コホート研究とケースコントロール研究に分け、ランダム効果モデルを用いてデータをプールし、オッズ比を求めた。

 30本の論文、31件の研究(コホート研究が19件、ケースコントロール研究が12件)が条件を満たした。登録患者数は1万2126人だった。自己抗体値は、100 U/mLを超えた場合に陽性と判断している研究が多かった。

 選出された研究のうち、13件(コホート研究3件、ケースコントロール研究10件)が反復流産を経験した女性を対象としており、9件(コホート研究が7件、ケースコントロール研究が2件)が妊娠を望んでいるのに1年以上妊娠できなかった女性を対象にしていた。

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