現在、被災地では、もともと手薄だった医療の綱渡りの状況が続いている。
発災直後の急性期対応から、亜急性期、慢性期へと医療ニーズが変化するにつれ、
ますます「人の手」が求められるようになるのだが、なかなか調整がつかない。
とにかく医療、介護・福祉機関が連携を密にして、患者さんの孤立を防ぐしかない。
日本の医療界全体で被災地を支え、現状を少しでもよくしていければと
願うばかりだ。
それにしても、医療制度は「平時」を前提に編まれたものだとつくづく感じる。
大災害や戦争で平穏な状態が崩れれば、そのしわ寄せは弱いところに押し付けられる。
いかに平時を保っていくか。
原子力という制御不能なテクノロジーへの電力依存は、もはや限界だろう。
「脱原発」の議論が各所で高まっているが、未来バンク事業組合理事長の
田中優氏の言説は、ストレートにわれわれ素人にも届いてくる。
田中氏は、環境・経済・平和など、多彩なNGO活動で知られている。
彼の近著『原発に頼らない社会へ』には、これまであまり知られてこなかった
情報が満載されている。
例えば、電力会社の「儲け」があらかじめ保証されている「総括原価方式」という
仕組みをご存じだろうか。電力会社の最大のコストは発電所ではなく、
送電設備だという。送電ロスを防ぐために、電気を高圧で送電する。
この高圧線のコストがべらぼうに高い。
1km当たり「10億円」ともいわれる。東京電力は東北電力と共同で青森県の
下北半島に「東通原発」を造って、東京まで送電している。その距離550km。
青森県の地方紙「東奥日報」によれば「1970年当時、
100万ボルトの送電線だけで2兆円かかる」とされていたそうだ。
田中氏は、次のように記している。
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著者プロフィール
色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。
連載の紹介
色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。
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