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小児ネフローゼ症候群臨床試験の進捗状況を発表

2011/06/18

和歌山県立医科大学の吉川徳茂氏

 小児ネフローゼ症候群を対象とした複数の多施設共同オープンランダム化比較試験について、6月17日から横浜で開催されている日本透析医学会(JSDT2011)で、和歌山県立医科大学の吉川徳茂氏(写真)が発表した。

 小児ネフローゼ症候群は、ステロイド治療により90%が寛解するものの、70%が再発し、頻回再発(1年間に4回以上の再発)が40%に上る。再発防止のため、初発時ステロイドの長期投与が行われているが、一方で成長障害や骨粗鬆症など長期投与による副作用が問題になっている。

 そこで吉川氏らは、国際小児腎臓病研究班が提唱している2カ月間のプレドニゾロン治療(国際法)と、長期投与法(6カ月投与)の有効性と安全性を比較する試験を計画した。初発ネフローゼ症候群の多くは一般小児科医が治療しているため、腎臓専門医のいる約30施設に加え、腎臓専門医のいない約120施設も参加した臨床試験ネットワークを構築、2007年9月から症例数250を目標に登録を開始した。

 今年3月1日時点の登録症例数は255例で、症例登録を終了している。最終結果で2カ月投与と6カ月投与で効果に差がないことが明確にされれば、安全性、経済性、受診期間などを考慮し、2カ月投与が標準投与になりそうだ。

 このほか吉川氏は、頻回再発型小児ネフローゼ症候群を対象としたシクロスポリン投与2時間後血中濃度(C2)値による投与量調節法の多施設共同非盲検ランダム化比較試験の結果についても報告した。

 試験の結果、主要評価項目である無再発率は、C2高値調節群の方がC2低値調節群に比べ高いことが示された。安全性評価項目である腎組織障害については、投与前と試験治療開始から23~27カ月時に腎生検をして調べた結果、両群で大きな差は見られなかったという。「有効性、安全性の両面から、C2高値調節群の方がより適切な治療と言えるだろう」と吉川氏は述べた。

(日経メディカル別冊編集)
 
【訂正】
2011年6月22日にタイトルと内容の一部を訂正いたしました。

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