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カプセルに封じ込めたヒト胚性幹細胞由来膵島の移植、新たな治療法として有望か

2011/06/29

糖尿病の治療法として膵島移植が試みられているが、ヒトの膵島が不足している上に、長期にわたって免疫抑制剤の投与が必要となるという大きな壁が立ちふさがっていた。これらの課題を一挙に解決する可能性があるとし期待を集めているのが、特殊なカプセルに封じ込めたヒト胚性幹細胞(hESCs)由来の膵島移植だ。動物実験の段階だが、移植したカプセル内の細胞からヒトインスリンが分泌され、かつ糖尿病症状の軽減につながったとする結果が報告された。カリフォルニア大学サンディエゴ校のKaitlyn Kirk氏らが、6月28日まで米サンディエゴで開催されていた米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 演者らはこれまで、耐久性のあるカプセルに封じ込めることにより、移植した膵島を同種移植による拒絶反応から保護できることを1型糖尿病の自己免疫性糖尿病モデルマウス(NOD)で示した。また、前臨床試験において、このカプセルデバイスが霊長類においても、同様に拒絶反応からの保護作用を示すことを報告している。

 今回の実験は、ヒト膵島の不足に対処する方法を確立することを目的に、実質的に無限に供給が可能と考えられるヒト胚性幹細胞由来の組織が利用できるのかどうかを検討するものだった。ヒト胚性幹細胞から膵臓上皮を誘導する方法については、すでにViaCyte社(以前のNovocell社)がin vitroでの実験で確立している。

 演者らは、カプセルに封じ込めたヒト胚性幹細胞由来の膵臓上皮をマウス(n=27)に皮下移植した。その結果、移植後7~9週間以内に、マウスの循環血液中にヒトインスリンが確認された。第7週から15週にかけて、グルコース刺激時の血清C-ペプチド値と刺激指数(最大C-ペプチド/空腹時C-ペプチド)ともに顕著に上昇し、反応性も確かめられた。

 また、グルコース反応性インスリン分泌が増加した期間中、カプセルデバイス内の細胞量は常に一定であったことが明らかになった。加えて、デバイスの中で細胞が成熟していたこともデータで裏付けられた。

 実験では、20μL相当の細胞から分泌されたヒトインスリンの血中濃度は、β細胞を破壊したマウス(n=21)において血糖の恒常性(ホメオスタシス)に影響を及ぼすのに十分量だったことも確認された。さらに、4000pMのC-ペプチドを示したマウスでは、糖尿病症状の軽減が最長23日間維持された。

 今回の実験結果から演者らは、「カプセル化したヒト胚性幹細胞由来の膵臓上皮の移植は、実用性が高く、免疫抑制剤の必要がない。さらに最小限の侵襲性で済み、糖尿病移植治療として有望な方法である」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)

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