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BMJ誌から
ACE阻害薬使用中の非糖尿病性腎症患者に追加すべきは、ARBより低塩食
ARB追加に優る蛋白尿・血圧改善効果

非糖尿病性腎症で、最大用量のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使用していても蛋白尿と血圧のコントロールが不十分な患者に、食塩摂取量の目標値を1日3gに設定した食事指導を行った場合と、最大用量のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を追加した場合、さらには低塩食ARBの両方を追加した場合で、最も利益を得られるのはどのグループだろうか。この3つの治療戦略による利益を直接比較する無作為化試験を行った独Groningen大学医療センターのMaartje C J Slagman氏らは、低塩食にはARB追加に優る蛋白尿、血圧改善効果があることを明らかにした。論文は、BMJ誌2011年8月6日号に掲載された。

 慢性腎臓病のいくつかの治療ガイドラインは、蛋白尿が1.0g/日を超える患者は血圧を125/75mmHg以下に下げ、かつ蛋白尿を1.0g/日以下にするように求めている。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を遮断する薬物療法を適用すると、血圧と蛋白尿は改善するが、多くの患者においてこの種の薬剤の単剤投与の効果は十分ではない。その場合には、増量、異なる種類のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系遮断薬の併用(dual blockade療法)、減塩指導、利尿薬の追加などの戦略が用いられる。

 これまでに行われた研究では、単剤投与中の薬剤の用量調整が十分に行われていた患者にdual blockadeを行っても、血圧と蛋白尿に対する作用は小さいことが示されていた。一方で、そうした患者に対する低塩食の効果をdual blockade療法と直接比較した研究はこれまでなかった。

 そこで著者らは、非糖尿病性の腎症ネフロパシー)で、最大用量のACE阻害薬を使用している患者に対する、(1)低塩食指導、(2)最大用量のARB投与、(3)それらの併用、について、蛋白尿と血圧への影響を調べる多施設無作為化クロスオーバー試験を行った。

 06年4月から09年10月に、オランダの医療施設3カ所の腎臓病外来で18歳以上の非糖尿病性腎症患者を登録。最大用量のACE阻害薬(リシノプリル40mg/日)を使用していても血圧が125/75mmHg超で、蛋白尿が1.0g/日超、クレアチニン・クリアランスが30mL/分以上の患者を選出した。安全上の理由から、収縮期血圧が180mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上の患者は除外した。

 条件を満たした54人の患者を登録、全員にリシノプリル40mg/日を投与しながら、下記の4通りの治療を6週間ずつランダムな順番で追加した。薬物療法については二重盲検で、食事療法はオープンラベルで行った。

 (1)偽薬+標準食(標準的な塩分摂取量である12g/日を目標値とする)
 (2)最大用量のARB(バルサルタン320mg/日)+標準食
 (3)偽薬+低塩食(塩化ナトリウムにして3g/日を目標値とする)
 (4)最大用量のARB+低塩食

 低塩食期間の食事内容については、日常的に利用される食品の塩分含有量を記したリストを配布し、専門的な栄養士が指導を行った。

 それぞれ6週の治療期間の終わりに、24時間蓄尿検査と血圧検査、血液検査を実施した。

 主要アウトカム評価指標は蛋白尿、二次評価指標は血圧に設定し、4通りの治療を完了した52人を分析対象にした。

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