日経メディカルのロゴ画像

患者の4割は医療従事者からの説明で誤解、皮膚の健康研究機構が発表
抗ヒスタミン薬の眠気と効果の強さに相関なし

「眠気の強さイコール効果の強さではないことが証明できた。患者のQOLを優先した治療薬の選択が必要だろう」と話す東京女子医大皮膚科の川島眞氏。

 特定非営利活動法人(NPO)の皮膚の健康研究機構は9月28日、鎮静性抗ヒスタミン薬のd-クロルフェニラミン(ポララミンほか)、ケトチフェン(ザジテンほか)と非鎮静性抗ヒスタミン薬のベポタスチン(タリオン)を使った比較試験で、抗ヒスタミン薬で生じる眠気と効果の強さは相関しないという研究結果を発表した。同機構の理事を務める東京女子医大皮膚科教授の川島眞氏は「一部の医師や薬剤師、患者には眠気が強いほど痒みなどを抑える効果も強いという誤解があったが、今回の調査で眠気の発現と薬の効果の強さには相関がないことを証明できた」と話した。

 試験はアトピー性皮膚炎患者309人、慢性蕁麻疹患者193人を無作為に2群に振り分け、多施設によるクロスオーバー比較試験の形で行われた。A群はベポタスチン2週間内服、1週間休薬、d-クロルフェニラミンまたはケトチフェン2週間内服、B群はd-クロルフェニラミンまたはケトチフェン2週間内服、1週間休薬、ベポタスチン2週間内服というプロトコルで実施。眠気と痒みの発現は毎週、臨床症状や皮膚疾患に起因するQOLについては試験開始前、2週間後(1剤目終了時)、3週間後(2剤目開始前)と試験終了後に調査した。

 この結果、眠気の程度を10点満点で評価したスコアは、1剤目を服用してから2週間まではA群(非鎮静性抗ヒスタミン薬服用)で4.0、4.4、4.0、B群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)では3.3、5.8、5.0と推移し、両群間に有意差が認められた(Wilcoxonの順位和検定、P<0.001)。2剤目を服用してからの2週間では、A群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は3.2、5.5、5.0、B群(非鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は2.7、3.2、2.9と推移し、同じく両群間に有意差が認められた(同、P<0.0001)。眠気の程度は「眠気なし」を0点、「これまで経験した最も強い眠気」を10点として患者が11段階で答えるNumerical Rating Scale(NRS)スコアによって評価した。

 日本呼吸器学会睡眠時無呼吸症候群に関する検討委員会などが作成した、日中の過度の眠気を点数化して評価するJapanese version of the Epworth Sleeping Scale(JESS)スコアでも、1剤目を服用した2週間、2剤目を服用した2週間ともに両群間で有意差が認められた。

 一方、痒みの程度を10点満点で評価したスコアは、1剤目を服用してから2週間まではA群(非鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は6.5、4.2、4.0、B群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は6.3、4.1、3.7と推移。さらに2剤目を服用してからの2週間は、A群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は5.1、3.9、3.7、B群(非鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は4.7、3.5、3.3と推移した。両群とも薬の服用によって痒みの程度は改善したものの、両群間のスコアに有意差は認められなかった。痒みの程度は「痒みなし」を0点、「これまで経験した最も強い痒み」を10点として患者が11段階で答えるNRSスコアで評価した。

 さらに、皮膚疾患特異的QOLの尺度である「Skindex16」を用いた比較では、1剤目を服用してから2週間でA群(非鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は43.3から24.9、B群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)は44.1から25.6と推移。2剤目を服用してからの2週間はA群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)が26.8から20.9、B群(鎮静性抗ヒスタミン薬服用)が25.2から20.1と推移し、両群間に有意差は認められなかった。Skindex16は、過去1週間に悩まされた皮膚症状について「全く悩まされなかった」を0点、「いつも悩まされた」を6点として患者が7段階で答える評価指標で、スコアが高いほどQOLが低い。

この記事を読んでいる人におすすめ