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BMJ誌から
スピロノラクトンとST合剤の併用で高齢者の高カリウム血症リスクが上昇
アモキシシリン併用時に比べ、同症による入院が12.4倍

 スピロノラクトンを継続使用している高齢者トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤ST合剤)を処方すると、アモキシシリンを用いた場合に比べ、高カリウム血症による入院が12.4倍になることが明らかになった。カナダToronto大学のTony Antoniou氏らが行った集団ベースのネステッドケースコントロール研究の結果で、論文は、BMJ誌2011年9月17日号に掲載された。

 スピロノラクトンは非選択的アルドステロン受容体拮抗薬で、収縮期機能不全を示す心不全や治療抵抗性高血圧、腹水、高アルドステロン症などの治療に用いられており、その処方は近年増加している。忍容性は一般に高いが、重症の高カリウム血症には注意が必要だ。最大で約3分の1の患者が高カリウム血症を経験するという報告もあるため、スピロノラクトンを使用している患者に対しては、観察を怠ってはならず、さらに高カリウム血症リスクを高める薬剤の併用は避けなければならない。

 スピロノラクトン服用者への処方を控えるべきと考えられる薬剤の1つがトリメトプリムだ。スルファメトキサゾールとの合剤は、尿路感染症の治療に広く用いられている。スピロノラクトンもST合剤も一般的な処方薬であるだけに、併用される機会は多い可能性がある。しかし、これらを併用した場合に高カリウム血症のリスクが実際に上昇するかどうかを調べた質の高い研究はなかった。

 著者らは、スピロノラクトンを使用している高齢者がST合剤を処方された場合の高カリウム血症による入院のリスクを調べるため、ネステッドケースコントロール研究を行った。カナダのオンタリオ州で、1992年4月1日から2010年3月1日までに入院患者データベースや処方薬データベースに登録されていた情報を分析した。ケースは、オンタリオ州在住の66歳以上の人々で、66歳の誕生日以降に慢性疾患の治療を目的としてスピロノラクトンが処方され、継続使用している間に、尿路感染症の治療に主に用いられる抗菌薬4剤(ST合剤、アモキシシリン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン)のいずれかを処方されて、14日以内に高カリウム血症で入院した患者とした。高カリウム血症で複数回入院した患者については、初回のみを分析対象にした。

 コントロールは、やはりスピロノラクトンを継続使用しており、抗菌薬4剤の処方を受けたが高カリウム血症による入院歴がなかった患者の中から、ケースと年齢、性別、慢性腎疾患の有無、糖尿病の有無がマッチし、同時期にST合剤、アモキシシリン、ノルフロキサシン、ニトロフラントインのいずれかを処方された人を、ケース1人当たり最高4人まで選んだ。

 主要アウトカム評価指標は、抗菌薬の処方と高カリウム血症による入院の関係とし、交絡因子で調整してオッズ比を求めた。

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