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支援活動専従の事務方として過ごした半年

2011/10/03
井垣 敦(日本プライマリ・ケア連合学会事務局職員、PCAT東京本部担当)

 PCAT事務局の井垣です。早いもので、東日本大震災支援プロジェクトPCATがスタートした3月から半年が経過しました。PCATが派遣したメンバーが、支援に入らせていただいていた避難所も既に閉鎖され、私たちの支援活動も徐々に、仮設住宅に移られた方々を対象としたものに変わってきました。

 私も近く、PCAT関連の業務を後任者に引き継ぎ、本来のプライマリ・ケア連合学会の事務という職務に戻ります。裏方ではありましたが、被災地支援活動の“第一線”を退き、今後は間接的にお手伝いすることになります。この機会に、これまでの活動を振り返りたいと思います。

震災発生直後からゴールデンウィークまで

 PCATプロジェクトがスタートした頃の最初の業務の主体は、先生方が被災地で活動し無事に帰って来ていただけるよう、万事手配を整えることでした。交通手段の確保は最優先で、鉄道や道路、空路などの状況を常時ネットで調べ、旅行社に問い合わせて確認し、「何時に何名が現地に入れる」という判断を下し、それをもとに、本部の先生が被災地に入られる先生方のスケジュールを調整する毎日でした。

 医薬品や物資を被災地に届けることも重要な役目でした。レンタカーを確保し、先生方のスケジュールと現地からのリクエストをもとに、ピーク時には10台の車両が、3カ所のハブ(支援拠点)と東京本部を行き交いました。その運行スケジュールを、その時々の状況をにらみながら組んでいきました。東京本部のホワイトボードに、車名を書き込んだ10個のマグネットを置き、あちこち入れ替えては、スケジュールを考えていたことを思い出します。

 徐々に支援医師の募集に応じてくださる先生方が増え、安定的に被災地に派遣できるようになり、また交通手段も、高速バスが利用できるようになりました。10台の車両は、それぞれのハブでの活動に割り当てられ、私は、高速バスの発着時刻にあわせてスケジュールを組むようになりました。ほぼ毎日、高速バスの予約を取り、スケジュールをまとめて、現地の拠点や、支援に入られる先生方にご連絡しました。

 「人」と「モノ」を動かすロジスティックという業務を、身をもって知った期間でもありました。

ゴールデンウィーク以降

 ゴールデンウィークを過ぎた頃から、前述のロジスティック業務は別の方に手伝っていただけることとなり、私はPCAT全体の予算管理や広報といった部分も含めた、事務管理を担当する立場になりました。この時期になると、支援に入られる先生方の交通手段の確保、活動スケジュールについては、大まかな流れが出来ておりましたし、被災地のハブ(支援拠点)の方でも、よい方がみつかり、長期に渡り活動を統括していただくコーディネーターを務めていただけるようになったからです。

 この頃から、PCAT内部の調整業務に比重が移っていきました。現地コーディネーターや本部の先生方のほか、現地や本部の事務方スタッフとの連絡、調整が主になりました。現地と本部との様々な調整、確認のためのミーティングの設定や、様々な協力団体との調整、ホームページの刷新など、これまできちんとできていなかった業務に一つひとつ取り組んでいきました。

 また、より被災地に近い場所から支援活動を行うために、PCATの本部機能は8月に仙台に移転しました。現地、仙台、東京の3拠点から支援する形になったことで、PCAT内部の連絡・調整業務をスムーズに進めることが、一層重要になってきています。

被災地支援活動専従の事務方として

 多くの災害支援活動において、「事務職」の方々は、「医療職」の方々と共に現地に入り、現地でさまざまな作業をされ、医療職の方々と共に一定期間、支援活動に従事すると、交替して元の業務に戻っていきます。もちろん、本来の業務のかたわらの支援活動ですので、このような形になるのは当然なのですが、PCATに関しては、当初から「本来の仕事=PCAT」という、私のような事務職を置いて活動した、ということが特異な部分の一つだと思います。

 私は現地でお手伝いをしたわけではありませんので、災害支援活動にかかわる事務職、とは分類されず、さらにその裏方といったところになるのかもしれませんが、専従の職員として、「非医療者」の立場の人間として支援できること、また「支援している人」への支援としてできることを追求し、活動できた半年間であったと思っています。

 最後に、お知らせをさせていただきます。日本プライマリ・ケア連合学会では、10月9日(日)に東京医科歯科大学で、被災地支援に関する一般公開のシンポジウム「東日本東日本大震災の支援を考える」~ 被災地支援被災地支援で学んだこと、そして私たちがこれからすべきことは ~を開催します。

市民公開シンポジウム「東日本大震災の支援を考える」
~ 被災地支援で学んだこと、そして私たちがこれからすべきことは ~
http://www.pcat.or.jp/wp-content/uploads/2011/09/shinsai_Symposium_0927.pdf

 午前のシンポジウムでは、PCATの成り立ちから現在までを振り返り、PCATが果たしてきた役割などについて、PCATからの派遣医師、管理栄養士、薬剤師、事務職(私です)など、さまざまな立場のパネラーによるディスカッションを行います。午後のシンポジウムは、これからの復興支援に対しPCATがとるべき行動、あるべき姿などにつきまして、医療職以外の方々のご意見もお聞きしながら、会場の皆さんと一緒に考えていくものです。参加自由(事前登録不要)、無料です。皆さま奮ってお越しください。

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著者プロフィール

PCAT●地域の医療・保健・介護が復興を遂げる日まで——を合言葉に、日本プライマリ・ケア連合学会が発足させた東日本大震災支援プロジェクト。PCATはPrimary Care for All Teamを意味する。

連載の紹介

PCAT便り~被災地支援の現場から~
外部からの被災地支援活動が徐々に縮小される中、長期的な支援活動を計画するPCAT。医師、薬剤師、看護師、保健師、管理栄養士など様々なメンバーから寄せられる、最新の活動報告を随時公開していきます。

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