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JAMA誌から
ノコギリヤシに下部尿路症状の改善効果なし
前立腺肥大症患者約370人を対象とした無作為化試験の結果

 欧米で前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療に広く用いられているノコギリヤシ果実抽出物に、下部尿路症状に対する効果がないことが、偽薬と比較した無作為化試験で明らかになった。米Massachusetts総合病院のMichael J. Barry氏らが、JAMA誌2011年9月28日号に報告した。

 ノコギリヤシ抽出物には、抗炎症作用、抗アンドロゲン作用、抗増殖作用などが存在すると信じられているが、これらの効果が臨床試験で証明されたという報告は1つもない。

 前立腺肥大症患者の下部尿路症状の改善を目的にノコギリヤシ抽出物を投与した無作為化試験を対象に、02年に行われたコクランメタ分析では、偽薬と比較した夜間頻尿の軽減、自己申告による症状改善、最大尿流率の上昇が認められた。だが、それ以降に行われた、より厳格な臨床試験では、偽薬との差は示されていない。標準用量(320mg/日)を用いた場合には有意な結果が得られないとしても、2倍量、3倍量にすれば偽薬との差は有意になるのではないかと考えた著者らは、北米の11施設で72週間の多施設二重盲検試験を行うことにした。

 08年6月から10年10月まで、45歳以上で、最大尿流率が4mL/秒以上、米泌尿器科学会症状指標(AUASI;0~35ポイントで低いほど下部尿路症状は軽い)スコアが8から24の患者369人を登録。米国ではノコギリヤシ抽出物は処方箋なしで購入できるため、意図的に多様な患者を登録した。除外基準は、既に前立腺肥大症に対する侵襲的な治療を受けていた患者、1カ月以内にα遮断薬を使用した患者、3カ月以内に5α還元酵素阻害薬を使用した患者、3カ月以内にノコギリヤシ抽出物を含む生薬を使用した患者、下部尿路症状に影響を与える薬剤を最近使用した患者、PSA値が10μg/L超の患者など。

 条件を満たした369人全員を、偽薬(186人)またはノコギリヤシ抽出物(183人)に割り付けた。ノコギリヤシ群には、最初の24週間は320mg/日を、次の24週間は2倍量の640mg/日を、続く24週間は3倍量の960mg/日を投与した。評価は12週ごとに実施した。

 主要アウトカム評価指標は、ベースラインと72週時点のAUASIスコアの差に設定(片側検定でP≦0.05を統計学的有意性の閾値とした)。AUASIスコアが3ポイント以上低下した患者の割合も調べた。2次評価指標は、自覚される排尿障害(BPH Impact Indexを用いて評価)、夜間頻尿、最大尿流率、排尿後残尿量、PSA値、患者の全般的な自己評価、性機能、排尿自制(ICSmaleISを用いて評価)、睡眠の質、前立腺炎(NIH慢性前立腺炎症状指数を用いて評価)などに設定した。

 分析は割り付け薬を1回以上使用し、12週ごとの評価を1回以上受けた患者を対象とするmodified intention-to-treatで行った。

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