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Ann Intern Med誌から
ペースメーカー使用者もMRIを安全に行える可能性
米国などで行われた前向き試験で555件のMRI検査を追跡

 心疾患でペースメーカー埋め込み型除細動器ICD)を使用している患者でも、あらかじめ適切に準備し、心臓電気生理学的モニタリングを行えば、MRI検査を安全に行える可能性があることが、大規模な前向き試験で分かった。米Johns Hopkins大学のSaman Nazarian氏らが、Ann Intern Med誌2011年10月4日号に報告した。

 現時点では、米食品医薬品局(FDA)もデバイス製造会社も、すべてのICDとほとんどのペースメーカーについて、使用中の患者のMRI検査を禁忌としている。だが、これらの埋め込み型デバイスの使用開始後に、約75%の患者がMRI検査が必要と判断される状態になると推算されている。近年、MRI検査が可能なMRI対応ペースメーカーが開発され、臨床試験で安全性が示されているが、既存のデバイスについてMRIが安全に行えるかどうかを調べた大規模研究はこれまでなかった。

 そこで著者らは、埋め込み型デバイス使用者向けに、一般に適用されている1.5テスラでMRI検査を安全に行うためのプロトコルを作成し、その安全性を調べる前向き試験を行った。

 in vitro、in vivo研究と予備的な臨床試験で得られた情報に基づいて患者を選択し、MRI中のデバイスの不適切な刺激作動または不適切な抑制作動を最小限に抑えるよう事前にプログラムを変更する方法で、安全に検査を完了することを目指した。

 具体的には、ペースメーカー使用者についてはペーシングモードを変更、ペースメーカー依存患者は非同期モード(VOO/DOO)に、それ以外の患者は抑制モード(VVI/DDI)にした。除細動器は、モニタリング機能と頻拍性不整脈に対する機能をオフにした。MRI終了後、すべての設定をMRI前の状態に戻した。

 MRI検査中は、心血管生命維持とデバイスのプログラミングの経験を積んだ看護師が患者の血圧、心電図、動脈血酸素飽和度(パルスオキシメトリーを使用)、症状をモニターし、万一の場合には心臓電気生理学の専門医が速やかに手助けできる状態を維持した。検査自体は、それぞれの施設で各標的部位に対して日常的に用いている方法で行った。

 03年2月から10年4月まで、米国の1施設とイスラエルの1施設で、埋め込み型デバイスを使用している、MRI検査が必要な患者438人(年齢の中央値は66歳、32%が女性)を登録。54%がペースメーカーを、46%が埋め込み型除細動器を使用していた。除細動器を使用しているペースメーカー依存患者などは除外した。

 これらの患者に、計555件のMRI検査を実施した(94%は米国で行った)。検査部位は、脳が222件(40%)、脊椎が122件(22%)、心臓が89件(16%)、腹部または骨盤が72件(13%)、上下肢が50件(9%)だった。15%の患者が149日(中央値)で複数回のMRI検査を受けた。最も多く検査を受けていた患者は、4回のMRI検査を問題なく完了していた。

 評価指標は、ぺーシングの不適切な刺激または抑制、症状、デバイスの機能的変化とした。

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