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NEJM誌から
シチシンは安価な禁煙補助薬として有望

 ピリジンアルカロイドであるシチシン(cytisine)が、禁煙補助薬として有効で安全である可能性が示された。英London大学のRobert West氏らが行った二重盲検の無作為化試験で、シチシン群の12カ月間の禁煙持続率は、偽薬群よりも有意に高いという結果が得られた。論文は、NEJM誌2011年9月29日号に掲載された。

 先進国では、禁煙を目指す人は様々な禁煙補助製品を利用できる。しかし、全世界で10億人を超える喫煙者の約3分の2は、そうした製品に手が届くほどの世帯収入が得られない国の人々だ。禁煙のためのコストと比べると、たばこの価格は非常に低い。 

 シチシンは、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に高い親和性を示す部分作動薬として機能する。α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体は、わが国でも経口禁煙補助薬として用いられているバレニクリンの標的で、これら2剤の作用は同様と考えられることから、シチシンも禁煙率向上に役立つと期待されている。実際に、旧社会主義国では、Cytisus laborinum L.の種子から抽出したシチシンを「Tabex」という商品名で約40年間禁煙補助薬として市販している。しかし、シチシンの禁煙効果を調べた大規模な無作為化試験はこれまで行われていなかった。

 著者らは、禁煙を試みる人々を対象に禁煙補助薬としてのシチシンの有効性と安全性を偽薬と比較する二重盲検の無作為化試験を、単一施設で行った。07年12月10日から患者登録を実施し、10年9月2日に追跡を完了した。

 成人で1日の喫煙量が10本以上などの条件を満たした740人を登録、無作為にシチシン(370人)または偽薬(370人)に割り付け、25日間投与した。シチシン群は、当初3日間は1.5mgの錠剤を1日に6錠(2時間おきに1錠ずつ)服用。その後9日間は1日5錠、続く4日間は4錠、次の4日間は3錠、最後の5日間は2錠と用量を減らしていった。両群ともに禁煙開始日は服用開始から5日目に設定した。試験期間中は両群の患者に最低限のカウンセリングなどを行った。

 追跡期間中の受診時に「禁煙している」と申告した患者については、呼気一酸化炭素濃度を測定、Russell Standardに基づいて本当に禁煙できているかどうかを判断した。

 主要アウトカム評価指標は、治療終了から12カ月時点までの禁煙持続率とした。具体的には、以下の条件を満たした場合に禁煙持続達成とみなした:禁煙開始から4週間後の受診時に、「過去2週間に喫煙なし」と報告し、呼気一酸化炭素濃度が10ppmだった患者のうち、その後の6カ月時と12カ月時の受診時に、「過去半年間の喫煙量が5本未満で、受診前1週間は喫煙なし」と自己申告し、どちらの時点でも呼気一酸化炭素濃度が10ppm未満だった人々。2次評価指標は、当初6カ月の禁煙持続率、12カ月時の点禁煙率などに設定した。

 登録された患者の年齢は、シチシン群が47.8歳、偽薬群が48.5歳、男性の割合はそれぞれ49.5%と43.5%。1日の喫煙本数の平均は23.0本と22.5本、呼気一酸化炭素濃度は19.2ppmと18.2ppmだった。これまでに禁煙を試みたことのある人の割合は、83.0%と81.4%と高かった。

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