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【寄稿2】
「米国で医者として働く」―仕事内容、勤務時間、給料を比べてみた
米国ピッツバーグ大学 津久井宏行

2007/12/10

つくい ひろゆき氏。1995年新潟大医学部卒業、東京女子医大日本心臓血圧研究所外科入局。2003年より、ピッツバーグ大学に留学。心臓移植、人工心臓Fellowshipの後、現在、University of Pittsburgh Medical Center Passavantにて、Advanced Adult Cardiac Surgery Fellow。

 日経メディカル オンラインに私の拙文(11.16「日本のバイト医師の仕事は米国のPhysician Assistant並み」)が掲載され、いろいろな方からメールを頂戴した。思ったよりも多くの人の目に留まったことが判明し、赤面したが、既に後の祭り…。頂いたメールで、「Physician Assistant(PA)ってなんだ?」とか、「どうやって資格を取るんだ?」といった質問が多くあった。改めて、PA自体が日本では認知されていないことを実感した次第だ。PAは本当に医師にとって心強い仲間なので、これからも機会を見つけてご紹介していきたい。

 そうこうしているうちに、編集部から「今度は、日本と米国の医師の仕事内容の違いをご執筆いただけないでしょうか」とのリクエストを頂戴した。私の場合、心臓外科という限られた科しか知らないし、ましてや地域差の激しい米国の1病院の経験を基に情報提供しても、これが米国の平均とは言い難い。まあ、こういった背景をお断りした上で、恥をかき捨て、もう一度徒然なるままに駄文を紡いでみたいと思う。

“手術漬け”の心臓外科フェローの1週間
 私が現在勤務しているUniversity of Pittsburgh Medical Center (UPMC) Passavantは、UPMC Healthcare System傘下の1病院である。ここでは、常勤外科医1名(私のボス)とFellowの私、それにPA2人で、年間450~500例ほどの開心術をこなしている。ちなみに日本で年間450例以上の開心術を行っているのは、榊原記念病院、国立循環器病センター、小倉記念病院、東京女子医大病院の4病院のみ。

 これだけの症例をこの陣容でこなすとなると、長時間労働を要すると思われるだろう。ところが、日本で典型的な研修医時代を送ったたまものだろうか、ここでの忙しさなど忙しいうちに入らず、体力的にも精神的にも非常に余裕を持って仕事に取り組んでいる。「時間に追われている」「ストレスにさらされている」という感覚が極めて少ないのだ。それはなぜなのか―。

 まず、私の実際の1週間の生活を紹介してみよう。月曜から金曜までは、朝6時からICUと病棟の回診がスタート。大抵20人前後の入院患者がいるが、上記の4人で手分けをして行うとそれほど時間はかからない。

 7時30分ごろには、手術室から麻酔導入終了を告げる呼び出しがかかり、手術を始める。症例の重症度にもよるが、たいてい正午前に1例目が終わる。1例目の手術中に、もう一つの手術室で2例目の患者さんの麻酔導入が行われる。1例目の患者さんをICUに送り届ければ、すぐに2例目の手術を始めることができるようになっている。そのため、昼食を取ることはあまりなく、手術室のラウンジにあるフルーツなどを少々つまむくらい。

連載の紹介

【寄稿】これだけは言いたい!
日常診療から、医療経営・制度、医師のキャリアやライフスタイルに至るまで、医療・臨床医にまつわる様々なテーマに関する、論客による寄稿のコーナーです。1回完結の場合もあれば、テーマによっては複数回にわたり連載します。

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