今回は、緊急性の高い「糖尿病ケトアシドーシス」、それが初発症状となって発症する「劇症1型糖尿病」、さらに「高浸透圧高血糖症候群」について解説する。
1. 糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)
インスリン作用の高度な不足によって起こるケトーシス、アシドーシスが主徴で、脱水が加わって意識障害を来す。2型糖尿病では、清涼飲料水の多飲者に起こることがあり、いわゆるペットボトル症候群として近年注視されている。
基礎疾患として、急性心筋梗塞、急性感染症、脳血管障害を合併している場合には重症化しやすいため、ICUでの高度な管理を必要とする。
DKAが疑われる場合には直ちに初期治療を開始し、並行して常勤の糖尿病専門医および救急専門医がいる医療機関への転送を準備する必要がある。
1日の診断遅れが致命的に
血糖値が500mg/dL以上で、尿糖および尿ケトン体が強陽性、嘔吐や腹痛と共に意識レベルが低下している場合、DKAと診断できる。
ただし、血糖値は300mg/dL前後のこともあり、血糖値のみで重症度を判断してはならない。脱水、著しいケトン尿、消化器症状といったDKAに特徴的な所見も確認して判断する必要がある。
DKAが疑われれば、直ちに生理食塩水を1000mL/時間(14~20mL/kg/時間)の速度で点滴を開始する。ただし、高齢者と小児の場合、点滴速度は7~10mL/kg/時間と、半分にする。
その上で、成人の場合は速効型インスリン0.1単位/kg(体重50kgならば5単位)をまずワンショット静注し、次いで点滴内に速効型インスリン0.1単位/kg /時間を加え、至急、専門医のいる医療機関に転送する。なお、小児では速効型インスリンのワンショット静注をしてはいけない。
治療のポイントは、(1)生理食塩水の大量輸液、(2)インスリンの持続静注、(3)カリウムの補給―の3点である。詳しくは参考文献1などのテキストを参照されたい。
DKAは1型糖尿病の初発症状のこともある。特に、1型糖尿病の新しい亜型(サブタイプ)として最近注目されている「劇症1型糖尿病」は、急性発症1型糖尿病の約20%を占め、発熱、消化器症状で発症し、数日間の経過でDKAに陥る。1日でも診断が遅れると生命が危険となる、臨床上重要な病態である。以下、当院で経験した劇症1型糖尿病の症例を提示する(参考文献2)。
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著者プロフィール
岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医・指導医。
連載の紹介
【臨床講座】糖尿病診療「こんな時どうする?」
インクレチン関連薬の登場、インスリン療法のデバイスの進歩などに伴い、糖尿病治療における薬剤の使い分けや選択は難しさを増しています。日常診療に役立つ実践的な診療ノウハウを、最新の知見を交えながら解説します。
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