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Pediatrics誌から
2009H1N1感染による健康小児の死亡リスク、MRSA肺感染で8倍に
ICU入院患児838人における検討

 2009H1N1パンデミックインフルエンザに感染し、ICUに入院した小児の死亡にはどのような要因がかかわっていたのか。このほど米Boston小児病院のAdrienne G. Randolph氏らが行った多施設コホート研究の結果、既存の神経学的疾患や免疫不全、インフルエンザ発症後の脳炎や心筋炎の診断、早期のMRSA肺感染、性別が女性であることが死亡の危険因子になっていたことが分かった。それまで健康だった小児に限定すると、ICU入院72時間後までのMRSAの肺感染が死亡リスクを8倍に高めていた。論文は、Pediatrics誌電子版に2011年11月7日に掲載された。

 2009H1N1は、世界中の小児の入院と死亡の原因になった。だが、2009H1N1感染小児の重体例に関するデータは病院単位では少ないため、重体化にかかわった要因の分析はこれまで十分に行われていなかった。そこで著者らは、米保険福祉省、国立衛生研究所(NIH)、疾病対策センター(CDC)などの協力を得て、米国内の35カ所の小児IUCに入院した患者のデータを収集。死亡と慢性疾患や細菌感染との関係を調べる多施設後ろ向き/前向き観察コホート研究を行った。

 09年4月15日から10年4月15日までに、小児ICUに入院した21歳未満の2009 H1N1確定例(RT-PCRまたは培養法により2009H1N1感染と判定された症例)と高度疑い例(インフルエンザA型陽性が明らかになったがそれ以上の検査は行われなかった症例)の情報をデータベースに登録した。臨床的特徴と検査結果、適用された治療、臨床転帰、人口統計学的特徴、それまでの健康状態などに関するデータを抽出した。

 細菌性肺炎の臨床診断、小児ICU入院から72時間以内の細菌重複感染のエビデンス、気道分泌物からの細菌の検出があった症例を、「推定される早期の細菌肺感染」とみなした。

 分析対象になったのは838人で、うち545人(65%)が確定例だった。553人(66%)は前向きに情報収集されていた。年齢の中央値は6歳で、58%が男児だった。慢性疾患を1つ以上抱えていた患者が70%で、残りの30%はインフルエンザ発症までは健康だった。入院から24時間以内の重症度を、18歳未満の患者にはPRISM III、18~20歳の患者にはAPACHE IIを用いてスコア化したところ、PRISM IIIのスコアの中央値は5、APACHE IIスコアの中央値は14.5だった。小児ICU入院期間の中央値は4日だった。

 88.2%にオセルタミビルが投与されていた(中央値4日間)。5.8%は小児ICU入院前に使用を開始していた。患者の多くが呼吸不全となり、564人(67.3%)が機械的換気を必要とした(中央値5日間)。162人(19.3%)に昇圧薬が投与された。

 小児ICU入院中、または在院90日までの死亡は75人(8.9%)で、うち31%は小児ICU入院日から2日後までに、35%は3日後から14日後までに死亡していた。

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