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 早朝、119番で出動した救急隊は、事故後に道路下の大木に屋根から衝突した車に近づいた。車内の男性は意識消失、救急車内で心停止に。搬送先の病院当直医は気管挿管し、輸液を開始。ドクターヘリが要請され、八戸ERに運ばれて来た。

 血圧測定不能、腹腔内出血が陽性。肺挫傷、下肢は動かない。血液ガス分析でアシドーシスと高カリウム6。第一鑑別は出血性ショック。輸液量を指標に尿道カテーテルを入れて尿量を見ると、赤ワイン色の尿が3mLだけ出てきた。「これは…?」

 外傷で血尿の場合は、(1)腎臓、尿管、膀胱損傷、(2)挫滅症候群、(3)中毒、覚醒剤─のどれか。「たぶん腎臓だ。受傷機転は?」と私。「車で路肩から転落して木に衝突。男性が車内で挟まれ、救出に30分。救急車で前医に搬送。受傷は推定で午前6時頃」。フライトドクターの報告を聞きながら、「本当に午前6時か?体温が33度と下がりすぎだ」と疑った。

著者プロフィール

今 明秀(八戸市立市民病院院長)●こん あきひで氏。1983年自治医科大学卒業。へき地診療を5年、外科を8年、外傷救急を6年修練。青森県ドクターヘリ スタッフブログ「劇的救命」(http://doctorheli.blog97.fc2.com/)を更新中。

連載の紹介

救急いばら道
八戸市立市民病院の院長であり、救命救急センター所長、臨床研修センター所長でもある今明秀氏が、ドクターヘリやドクターカーを擁する同病院救命救急センターでスタッフと日夜奮闘する様子を、克明にお伝えします。

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