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長期投薬が解禁されて10年…処方日数は本当に長くなった?

2012/02/16

 2002年に薬剤の長期投与の制限(原則として14日以内)が撤廃され、10年がたちます。最初の何年かは薬の処方日数が長くなる傾向が続いていたと記憶していますが、ここ数年間の処方日数はどうなっているのでしょうか。そんな興味から、2005~2011年に受診した健康保険組合の加入者のデータを基に、1処方当たりの平均処方日数を調べてみました。データ集計の都合で、毎年7月~翌年6月を1年の単位にしていますので、ご了承ください。

 調査対象は、1日の用量が決まっていて処方日数が計算しやすい内服用の錠剤です。内服薬には散剤やカプセル剤もありますが、日本では錠剤が多い点を考慮しました。抗菌薬、抗アレルギー薬、降圧薬、ホルモン剤、ビタミン剤、消炎鎮痛薬、向精神薬など、735種類の薬効(ATC小分類)について集計し、複数の薬が一度に処方された場合は、個別にカウントしました。新薬の場合は、処方日数が制限されるケースもあると考えられるため、発売年(前述の定義による調査年)のデータは除外しています。また、必要に応じて服用する頓服薬は、処方日数の計算ができないので対象外にしました。なお、最近一部で増えている、1週間に1回服用する薬剤も含めて集計しているので、若干の影響があるかもしれないことを、あらかじめお断りしておきます。

 調査対象期間と母集団の人数は、以下の通りです。集計の結果、内服錠剤の処方件数は延べ2300万件となりました。
・2005年7月~2008年6月 約32万人
・2008年7月~2009年6月 約60万人
・2009年7月~2010年6月 約75万人
・2010年7月~2011年6月 約100万人

処方日数の長期化傾向は頭打ち?
 全錠剤の処方1件当たりの平均処方日数は、2005年7月~2006年6月に15.8日でしたが、2010年7月~2011年6月には1.3日増えて17.1日となりました(図1)。この6年間については、確かに処方期間が長くなっているようです。ただ、2009年7月以降の直近2期を見ると、平均処方日数はほとんど変わりません。長期化の傾向が頭打ちになってきたのでしょうか。

著者プロフィール

木村真也(株式会社日本医療データセンター社長)●きむらしんや氏。1981年京都産業大学卒。大手外資系製薬会社マーケティング部長、CROバイスプレジデントなどを経て、2002年に日本医療データセンターを設立。

連載の紹介

レセプトを読み解く
日本医療データセンター(JMDC)では、複数の大手健康保険組合からのレセプトや健診データを基に、様々な分析を行ってます。1000万件を超える膨大なデータから、同社社長の木村氏が、医療の「今」を探ります。

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