突然ですが、次の症例をご覧ください。
これは、この季節、水虫で皮膚科を受診する患者の典型的なパターンです。もちろん皮膚科ではなく、かかりつけ医を受診する患者も少なくないでしょう。
実は、この症例には、患者が陥りがちな「常識のウソ」が幾つか含まれています。治療に当たる医師が、こうした患者の勘違いをきちんと把握し、修正してあげないと、本来はきっちり治せる水虫も、なかなか治らなくなってしまいます。
何が間違っているのか、順番に検証してみましょう。
【ウソ】足の皮が剥けたら水虫
足の皮膚がむけたり、小水疱ができたりしたら、水虫である──。
本当でしょうか。答えは、もちろんノーです。足に病変を作る疾患はたくさんありますから、足の皮膚に異常が出たとしても、必ずしも水虫とは限りません。「自称:水虫」で受診した患者さんのうち、3分の1は違う疾患であったというデータもあります。足の皮がむけたり、水疱ができたりしても、水虫でない場合もかなりあるのです。
【ウソ】水虫は痒い
世間では「水虫は痒い」と思われていますし、テレビのCMでも、水虫はいかにも痒いものであるように喧伝されています。受診された患者さんも、よく「痒くないので水虫ではないと思います」「かゆいので水虫でしょうか」とおっしゃいます。
本当に、水虫は痒い病気なのでしょうか。これも、答えはノーです。調査によると、きちんと水虫と診断された患者のうち、かゆみを有していたのは、なんと1割ほどだったと言います。逆に言えば、水虫の大半は痒くないのです。むしろ、「水虫は痒くない病気」といった方が正しいでしょう。
痒くないからこそ、多くの人が水虫を放置しているのです。その結果、日本人の5人に1人は水虫を持っているといわれています。
【ウソ】水虫は見れば分かる
問題です。次の3枚の写真のうち、どれが水虫でしょうか。