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「水虫は痒い」はウソ、「試しに抗真菌薬」はNG

2012/07/02

 突然ですが、次の症例をご覧ください。

 暖かくなってきた頃から、足の指の間の皮が剥けはじめました。しかも痒みもあります。これは水虫に違いないと思い、早速ドラッグストアへ行って、テレビCMで宣伝している水虫の治療薬を購入しました。でも、薬を塗ってもあまりよくなりません。頑固な水虫だと考え、頑張って毎日薬を塗り続けましたが、それでも改善しません。そこで困って、皮膚科を受診しました。

 これは、この季節、水虫で皮膚科を受診する患者の典型的なパターンです。もちろん皮膚科ではなく、かかりつけ医を受診する患者も少なくないでしょう。

 実は、この症例には、患者が陥りがちな「常識のウソ」が幾つか含まれています。治療に当たる医師が、こうした患者の勘違いをきちんと把握し、修正してあげないと、本来はきっちり治せる水虫も、なかなか治らなくなってしまいます。

 何が間違っているのか、順番に検証してみましょう。



【ウソ】足の皮が剥けたら水虫

 足の皮膚がむけたり、小水疱ができたりしたら、水虫である──。

 本当でしょうか。答えは、もちろんノーです。足に病変を作る疾患はたくさんありますから、足の皮膚に異常が出たとしても、必ずしも水虫とは限りません。「自称:水虫」で受診した患者さんのうち、3分の1は違う疾患であったというデータもあります。足の皮がむけたり、水疱ができたりしても、水虫でない場合もかなりあるのです。

 ⇒ 足にできるのは水虫だけではない


【ウソ】水虫は痒い

 世間では「水虫は痒い」と思われていますし、テレビのCMでも、水虫はいかにも痒いものであるように喧伝されています。受診された患者さんも、よく「痒くないので水虫ではないと思います」「かゆいので水虫でしょうか」とおっしゃいます。

 本当に、水虫は痒い病気なのでしょうか。これも、答えはノーです。調査によると、きちんと水虫と診断された患者のうち、かゆみを有していたのは、なんと1割ほどだったと言います。逆に言えば、水虫の大半は痒くないのです。むしろ、「水虫は痒くない病気」といった方が正しいでしょう。

 痒くないからこそ、多くの人が水虫を放置しているのです。その結果、日本人の5人に1人は水虫を持っているといわれています。

 ⇒ 水虫は痒くないことの方が多い


【ウソ】水虫は見れば分かる

 問題です。次の3枚の写真のうち、どれが水虫でしょうか。

著者プロフィール

常深祐一郎(東京女子医大皮膚科准教授)●つねみゆういちろう氏。1999年東大卒。東大病院と国立国際医療センター皮膚科で研修後、東大皮膚科医員、助教を経て、2014年から現職。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医、日本医真菌学会認定専門医。

連載の紹介

【短期集中講義】水虫治療 常識のウソ
もはや国民病となった水虫。でも、まだまだ、医師や医療関係者の中にも誤解は多いようです。水虫はきちんと理解して治療すれば完治も可能です。もう一度、しっかり勉強してみましょう。なお本連載では、愛着も込めて、白癬をあえて「水虫」と称します。

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