研修医 先生、前回の続きですが、Bさんは心房細動の発作が年に2~3回しかないとのことですよね。それしか発作がないのに抗凝固療法をしなければならないのでしょうか?
指導医 良い質問です。Bさんの紹介元の先生も、おそらく発作性だったために抗凝固療法を行っていなかったのでしょう。
日本で行われた医師の抗凝固療法実態調査で、こんなデータ1)があります。本来ワルファリンを投与しなければならない患者さんにワルファリン投与を行っていない医師248名に、その理由を聞いたところ、52%の医師が「発作性心房細動だから」と答えたのです。これは感覚的には理解できることで、心房細動の持続時間が短いと心房の中で血栓ができにくいと思われがちなのです。
しかし実際は、発作性だから大丈夫という認識は大きな間違いであることがいくつものエビデンスから分かっています。たとえば最近のこの論文2)は、6500例以上を対象にした大規模試験ですが、1年半の追跡でも、発作性心房細動の患者さんと慢性心房細動の患者さんとで脳梗塞の累積発症率に有意な差は認められませんでした(図1)。どうしてだと思います?
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。
著者プロフィール
小田倉弘典(土橋内科医院〔仙台市〕院長)●おだくら ひろのり氏。1987年東北大医学部卒。仙台市立病院循環器科、国立循環器病センター、仙台市立病院循環器科医長を経て2004年より現職。ブログ「心房細動な日々」
連載の紹介
プライマリケア医のための心房細動入門
患者数が増え続け、治療方針も大きく変化している心房細動。循環器疾患を専門としないプライマリケア医向けに、実際の症例や最新のエビデンスを交えながら、心房細動の診断、治療を“分かりやすさ最優先”で解説します。
『プライマリ・ケア医のための心房細動入門』が書籍になりました
本連載のバックナンバーを大幅に加筆・修正し、書き下ろしも加えて全体を再構成。2014年1月に発表された「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」の内容も踏まえ、「リスクマネジメント」の視点から心房細動診療の進め方を分かりやすく解説しました。(小田倉弘典著、日経BP社、3500円税別)
この連載のバックナンバー
-
2014/05/21
-
2014/04/25
-
2014/04/18
-
2014/03/25
-
2014/02/28