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若年性乳癌の予後不良の原因はホルモン療法感受性の低下と関連する可能性【乳癌学会2012】

 若年者の乳癌が予後不良となる原因として、若年者ほどホルモン療法感受性の低下が関連する可能性が示された。ただし近年の治療法の進歩により、以前よりも治療成績に及ぼす年齢層の影響が改善された可能性も示された。がん研有明病院乳腺センターの蒔田益二郎氏らが、6月28日から熊本で開催された第20回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 乳癌患者の健存率を年齢層別にみると、30歳未満、35歳未満は有意に予後が不良である。多変量解析でも、年齢層はリンパ節転移や治療時期などに並び、有意な予後規定因子であることが分かっている。症例数は年齢とともに加速度的に増加するため、若年者は症例数こそ少ないが、腫瘍径については若年者の方が大きい。

 そこで蒔田氏らは、30歳未満の症例に対して10歳、15歳、20歳を加えた年齢の症例を集めて検討した。その際、手術年は±1年以内とし、できるだけ腫瘍径が揃うようにした患者を抽出し、30歳未満群、+10年群、+15年群、+20年群と4群に分けて比較した。

 対象は、1986年から2004年までの全1万1313症例から、腫瘍径が同程度で50歳未満の例を抽出。非浸潤癌、両側乳癌、ステージIV、非治癒切除、妊娠関連乳癌、男性乳癌を除いた3692例から抽出した、30歳未満群90例、+10年群89例、+15年群90例、+20年群90例とした。

 組織型、波及度、リンパ節転移、脈管侵襲は、4群間で差はなかった。エストロゲン受容体(ER)も4群とも40%前後で、群間に有意差は認めなかった。一方、プロゲステロン受容体(PgR)については若年者ほど有意に陰性率が高かった。PgR陰性率は、+20年群が20%程度だったのに対し、+10年群は30%、30歳未満群は40%以上だった。

 健存率について検討した結果、年齢層が低いほど健在率も低く、30歳未満群では有意に健存率が不良だった(p=0.0006)。

 PgR陰性例に限って健在率を検討した結果、年齢層による予後の差はなかったが、PgR陽性例に限って4群間で健存率を検討すると、30歳未満群で有意に予後不良だった(p=0.0159)。

 これらの結果から、若年者ではホルモン療法が効きにくい可能性が考えられる。そこで、35歳未満の症例について、LHRHアゴニストが臨床で使用され始めた1994年を境として治療成績に違いがあるかどうかを検討した。

 35歳未満でHR陰性例について、1993年までの症例(21例)と1994年以降の症例(63例)に分けて健存率を検討した結果、2群間に有意差はなかった。一方、35歳未満でHR陽性例について、1993年までの症例(48例、うち約4割にSERMを投与)と1994年以降の症例(101例、うち約2割にSERMのみ投与、約6割にLHRHアゴニストを投与)を比較したところ、1994年以降群で有意に予後が良好だった(p=0.0127)。

 蒔田氏は、「若年であるほど予後不良であるのは、ホルモン療法感受性の低下と関連することが示唆された」と結論した。ただし、LHRHアゴニストの登場など、治療法の進歩によって治療成績に及ぼす年齢層の影響が低下しており、年齢層による違いを考慮する必要性が少なくなった可能性があるとした。

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