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Luminal A乳癌で化学療法の上乗せ効果が見込めるKi-67の最適なカットオフ値は20~25%【乳癌学会2012】

 化学療法の上乗せ効果が得られるLuminal A乳癌患者を見つけ出すKi-67の最適なカットオフ値は20~25%であることが示された。那覇西クリニック乳腺外科の玉城研太朗氏が、6月28日から熊本市で開催された第20回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 Ki-67は、G1中期、S期、G2期、M期に発現する核抗体で、細胞増殖を示すバイオマーカーとして用いられている。ただ、固定法、染色法、評価法については現在様々な報告があり、標準化が課題となっている。

 そこで、玉城氏らは、Luminal乳癌におけるKi-67の生物学的・臨床病理学的な検討のほか、沖縄県におけるKi-67測定状況について調べた。

 対象は、那覇西クリニックまたは東北大学腫瘍外科を受診した日本人浸潤性乳管癌408例。年齢中央値は56歳(範囲:25-89歳)。

 検討項目は、Ki-67値とER、HER2発現状態の相関、Ki-67値と病理学的悪性度との相関、Luminal A・Luminal B乳癌における全生存期間(OS)と無病生存期間(DFS)から見たKi-67の最適カットオフ値の検討。カットオフ値として、14%、20%、25%、30%を設定した。

 その結果、ERとHER2発現状態別の平均Ki-67値は、Luminal A(ER陽性/HER2陰性)が17.9、Luminal B(ER陽性/HER2陽性)が36.4、HER2過剰発現(ER陰性/HER2陽性)が46.8、トリプルネガティブ(ER陰性/HER2陰性)が56.3で、各群間でKi-67値に有意差が見られた。

 Luminal A患者におけるKi-67値の分布図をみると、Ki-67低値の患者が多く、Ki-67値が高くなるにつれ、患者数が徐々に減少する傾向が見られたが、Ki-67値が高値(50以上)の患者も点在しているのが特徴だった。

 Ki-67値と組織学的グレードの相関をみると、グレードが上がるほど、ki-67値も上昇する傾向が確認された。しかし、グレード1ではKi-67低値例が多かったが、グレード2、グレード3ではKi-67値の分布にばらつきがあり、特にグレード3ではKi-67値が高値から低値まで広く分布していた。これらの結果から、組織学的グレードとKi-67値には相関が認められるが、グレード2/3ではばらつきがあり、グレード3だからといって必ずしもKi-67が高値とは限らないことが想定された。

 Luminal A例のDFSについての解析の結果からKi-67値のカットオフ値を検討したしたところ、Ki-67値14%と20%のグループはER陽性/HER2陰性例全体に対して有意にDFSが良好で、DFSは高く維持されていたが、Ki-67値25%、30%のグループは有意差が確認されず、時間の経過とともにDFSは低下していた。そのため、Luminal A例で化学療法の上乗せ効果が得られる患者を見つけ出すためのKi-67のカットオフ値は、DFSが低下していく20~25%の間にあると推測された。

 Luminal B例では、有意なKi-67のカットオフ値(14%、20%、25%、30%)は見いだされなかった。なお、Luminal A・Luminal B例ともに、Ki-67発現状態によるOSに有意差は見られなかった。

 さらに玉城氏は、2012年4月に沖縄県の乳癌専門7施設を対象に実施したKi-67測定の実施状況に関するアンケート調査結果を提示。固定法、染色法、評価法の全てにおいて、施設間でばらつきがあった実態を報告した。

 Ki-67測定の検体は、手術標本または生検標本どちらか一方と回答した施設と、両方で測定していると回答した施設が3施設ずつだった。

 標本摘出から固定までの時間は、全施設の回答が一致し、生検はすぐ、部分切除では30分、全摘では30分という回答だった。一方、固定時間は施設間で違いが見られ、18時間、24時間、24-48時間、24時間がそれぞれ1施設ずつ、48時間が2施設だった。

 Ki-67発現率を算出する際の評価場所は、最も染色されている部位(hotspot)が4施設、全体の平均値が2施設だった。Ki-67発現率を評価する際の腫瘍細胞数は、100個が1施設、500-1000個、1000個以上がそれぞれ2施設ずつ、目分量は1施設だった。

 また、ER陽性/HER2陰性患者で化学療法を考慮するKi-67値のカットオフ値は、15%が1施設、20%が2施設、25%~30%が1施設、30%が3施設だった。

 玉城氏は、現在、日本乳癌学会の班研究で、Ki-67の固定法・染色法の均てん化と評価方法の精度管理について検討されていることを紹介した上で、「Ki-67測定を臨床に応用することが非常に重要。班研究により、精度管理と最適なKi-67値のカットオフ値を設定するなど、日常臨床に直結した推奨が示されることを期待したい」と語った。

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