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2012年11月に発売された、スイッチOTC薬「アレグラFX」

 花粉の飛散が真っ盛り。毎年この時期になると、私はかかりつけの診療所に花粉症の薬をもらいに行く。しかし今年は、待望のスイッチ一般用医薬品(OTC薬)「アレグラFX」が登場したので、町中の薬局に花粉症対策の薬を買いに行くことにした。

 自宅近くの薬局で目当てのアレグラFXを見つけたが、店頭価格は28錠(14日分)で1980円(税込)。私は最低でも1カ月ほど服用するので、28日分であれば3960円になる。うーん、やっぱり高いなあ。診療所で医療用医薬品のアレグラを処方してもらった場合、院内処方であれば自己負担額は2300円、院外処方でも2600円くらい(3割負担)なので、診療所で処方してもらう方が安い(細かい計算は割愛、以下同)。

 さらに、私は外用薬も併用するので大変である。点眼薬として「アイフリーコーワAL」1480円×2本、点鼻薬として「ナザールAR」1974円×2本を足せば、1万円を優に超えてしまう。これに対して、診療所で内服薬と点眼薬と点鼻薬を一緒に処方してもらうと、総額でだいたい4000~5000円くらいで済んでしまうので、やっぱり今年もおとなしく空いてる診療所で薬をもらおうと薬局を後にした次第だ。

“保険外し”の議論ばっかりだけど
 常々言われているけど、OTC薬は高い。医師の診察が必要ないのだから安いはずだと思って薬局に行くと、いつも裏切られる。当然ながら、医療保険が使えるかどうかはとても大きい。「ロキソニンS」にしても、「タイレノールA」にしても、診療所で処方してもらった方が自己負担額は安くなるのである。最近、OTC薬化で一悶着あったエパデールも、診療所で先発品を処方してもらっても月々3000円くらいの負担で済ませられるが、OTC薬のエパデールは果たしてそんなに安くなるだろうか。

 OTC薬は、その価格の高さが普及の課題になっている。矢野経済研究所の調査富士経済の調査を見れば、ここ数年OTC薬市場の規模はここ数年ほとんど変わっていない。医療費に占める薬剤費が伸びているのとは対照的だ(医療費に占める薬剤費の割合は、包括医療費分などがあるため正確には公表されていないが、大幅に増加しているとの見方が多い。例1例2例3[データ集の中の「卸医薬品販売額に占める医療用・一般用医薬品の割合の年次別推移」]、など)。

 こうした実態は当然ながら厚生労働省も把握しているのに、状況は変わらない。「患者が薬局でセルフメディケーションを」と、厚労省はOTC薬を推進する姿勢を見せるが、実際には単にポーズを取っているだけではないかと疑ってしまう。本気でセルフメディケーションを推進するのであれば、思い切った政策を導入する必要があると思う。

 もちろんそうした動きもないわけではない。2012年の診療報酬改定では、単なる栄養補給目的でのビタミン剤投与が保険の対象外となった。これは行政刷新会議が2009年11月に事業仕分けで、ビタミン剤など市販薬類似品について、「自己負担割合の引き上げを試行すべき」「一部医療保険の対象から外すことも検討する」などと提言したのを受けたものだ。軽微な疾患については、診察料はともかく薬剤料を保険外併用療養費にしてしまえば、患者は薬局でOTC薬などを買うようになるか何もしなくなり、見かけ上の医療費は減る。

 でも、このような“保険外し”は大局的に見て、患者の利便性を損なう方向じゃないかと思う。社会保障審議会医療保険部会でも、この提言に対して「患者に過度な負担を強いるべきではない」という意見が出された。また、上記の方針が広がればメーカーも医療用医薬品と同効薬のOTC薬を出してしまうと自分の首を締めることになるので、「新規成分の市販品の開発を躊躇する可能性がある」といった問題点も指摘されている。

OTCの薬剤説明も立派な医療行為
 であれば、いっそのことOTC薬にも医療保険を使えるようにしてしまうのはどうだろうか。薬剤師が販売しなければならないOTC薬の「第一類医薬品」に限ってでいいから。別に7割給付でなく5割給付でもいい。薬局でOTC薬を買った方が安いということになれば、患者も真剣にセルフメディケーションを考えるだろう。診療所を受診した方が自己負担額が安く済むというのは、どう考えても公正性に欠ける。

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