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日経メディカル2013年4月号「この人に聞く」(転載)
専門医制度で日本の医療は変わる、今年度中に第三者機関を
池田 康夫(社団法人日本専門医制評価・認定機構理事長)

いけだやすお氏
1944年東京都生まれ。68年慶應大卒。73年米ブラウン大留学、76年慶應大輸血センター専任講師を経て、91年同大内科学教授、2005年同大医学部長。08年から現職。現在、慶應大名誉教授、早大理工学術院教授。
写真:秋元忍

 3月7日の厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」で報告書案が了承され、正式な報告書が4月に公表されます。質が担保された専門医を、学会から独立した中立的な第三者機関で認定する新たな仕組みづくりがその骨子です。

 専門医の認定を、学会主導ではなく欧米のように中立的な第三者機関が行うべきとする議論は、社団法人日本専門医制評価・認定機構の前身である学会認定医制協議会が1980年代に発足した当時からありました。しかし、各学会の意見調整が困難でなかなか進展しませんでした。2008年に同機構が社団法人となり私が初代理事長に就任した際、機構の中に「専門医制度在り方検討委員会」を立ち上げ、白紙の段階から新しい専門医制度の仕組みをつくろうと議論を始めたんです。

 わが国では現在、各学会が独自に制度を設けて専門医を認定しています。02年に厚生労働大臣告示が出され、一定の外形基準を有する学会が認定する専門医ならば広告できることになり、学会がこぞって専門医制度を設けるようになりました。現在、高血圧学会、頭痛学会などが認定する、病名や症状名の付く専門医も少なくありません。極端に言えば、基準さえ満たしていれば、学会の数だけ専門医ができてしまうわけです。そこで委員会では、専門医制度は何のためにあるのか、誰のためにあるのかということから議論し直しました。

 新たな専門医制度を設計する上で重視したのが、患者さんの受診に役立つものにすることでした。自分を診てくれる医師がどういう技術を持ち、どういう病気を診ることができるのかを理解しやすい形にする。そのため、専門医を個別学会単位ではなく診療領域単位としました。さらに「基本領域専門医」と「サブスペシャリティー専門医」に二分し、前者を取得後に後者を取得するという2段階制にしました。

 また専門医制度は、患者さんの期待に応えられるだけの質を担保するものでなければなりません。今の制度では学会の認定・更新の基準がばらばらで、必ずしも質が担保されたものには残念ながらなっていません。新制度では専門医の認定・更新基準を標準化し、学会から独立した中立的な第三者機関を設立し、そこで行うものとします。

 第三者機関では、専門医育成のための研修プログラムと研修施設の評価・認定も行います。研修プログラムについてはカリキュラムにのっとって各学会がモデルプログラムを構築し、それを基に各研修施設が具体的なものを作成することを想定しています。こうした仕組みにより、それぞれの診療領域において患者から信頼される、標準的な医療を提供できる医師が育成されると考えています。

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