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ipilimumabと抗PD-1抗体薬nivolumabの併用により進行悪性黒色腫の半数に顕著で持続的な腫瘍縮小効果

2013/05/17
野中希=医学ライター

 進行した悪性黒色腫に対する標準治療薬ipilimumab(商品名:Yervoy)と抗PD-1抗体薬nivolumabの併用療法により、患者の約半数で長期間の腫瘍縮小効果が得られたことがフェーズ1試験で明らかになった。詳細は、2013年5月31日から6月4日にシカゴで開催される第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で、ニューヨークにあるMemorial Sloan-Kettering Cancer CenterのJedd D. Wolchok氏が発表する。
 
 ipilimumabは細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。2011年5月に米食品医薬品局(FDA)に承認されて以来、現在では多くの国で進行悪性黒色腫の標準治療薬となっている。

 一方、開発中の抗PD-1(Programmed cell death 1)抗体薬nivolumabは、PD-1を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。PD-1受容体に対してリガンドであるPD-L1(programmed cell death 1 ligand-1)が結合することで免疫反応が抑制されることが示されている。

 CTCL-4およびPD-1は、どちらも重要な免疫チェックポイント受容体であり、T細胞の表面上にあってT細胞の活性化を抑制する。免疫チェックポイントとは免疫が自らの体を攻撃しないための免疫逃避機構であり、腫瘍細胞はこの仕組みを利用して免疫反応から逃れる能力を獲得している。

 CTLA-4阻害によりPD-1が誘導されること、およびCTLA-4/PD-1の両方を阻害することで抗腫瘍活性が増強されることがマウスの実験で示されていることから、Wolchok氏らは今回のフェーズ1、proof-of-principal試験を行った。

 この試験では、3回以下の前治療歴のある切除不能、ステージ3/4の転移性悪性黒色腫患者を6つの治療群に割り付けた。

 2012年6月の時点で治験治療を受けた69症例のうち、今回発表されたデータは、ipilimumabとnivolumab併用療法を完了した3つの群、計37症例の解析に基づく。

 これら3つの群では、ipilimumab(3mg/kg)とnivolumab(0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgのいずれか)を同時併用で3週おきに4サイクル、その後nivolumabのみを3週おきに4サイクル静脈投与した。24週目以降、病勢制御症例かつ用量規定毒性(DLT)の認められない症例に対しては12週おき8サイクルを施行した。

 併用治療を受けた37例の腫瘍縮小率は38%(95%信頼区間:23-55)で、各投与量別では、21%(95%信頼区間:5-51)、47%(95%信頼区間:23-72)、50%(95%信頼区間:12-88)と、投与量が最も多い群で最大の効果が得られた。

 また、全症例の約3割において、80%以上の顕著な腫瘍縮小を認めた。治療後奏効までの期間も短く、併用治療が奏効した4例中3例で、治療開始後3カ月以内にその効果が確認された。これは、ipilimumab単独より早い。

 全6群のうち、同時併用治療群以外の2群については、ipilimumab既治療の症例を対象に、nivolumab(1mg/kg、3mg/kgのいずれか)のみを2週おきに48サイクル静脈投与した。現時点の中間解析では、過去の治療でイピリムマブによる臨床的有用性が認められなかった患者においてもnivolumab単剤により顕著な腫瘍縮小効果が確認されている。

 有害事象は概ね管理可能で、大半の症例において治療効果に影響を与えるものではなかった。ただし、最も高用量を投与した群では、ぶどう膜炎、脈絡膜炎、大腸炎や臨床検査異常など、グレード3/4の関連有害事象が59%で発現した。

 「悪性黒色腫の免疫治療において、これまでに先例のない有益な結果であり、ipilimumab/nivolumab併用療法は進行悪性黒色腫に有望な治療であることが示唆された」と、Wolchok氏は述べる。

 2013年6月には、進行悪性黒色腫に対するファーストライン治療としてipilimumab/nivolumab併用療法を検証するランダム化フェーズ3試験を開始する。

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