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新進医療コンサル会社の蹉跌、そして病院が連鎖倒産…

2008/04/09

 3月19日、ある医療コンサルティング会社が東京地方裁判所に自己破産を申し立て、破産手続き開始決定を受けました。

 この医療コンサルティング会社は、この日経メディカル オンラインでも 「話題の会社『アスクレピオス』とは?」の記事で紹介されているように、かねて注目を浴びる企業でした。

 ギリシャ神話に登場する医聖の名を冠したこの医療コンサルティング会社は、2004年9月に設立されました。クライアントの医療機関に対して、事業企画運営、融資斡旋、医療機器設備のリース、人材派遣など総合医療経営コンサルティング業務を行うとともに、大手商社などとも取り引きを行い業務拡大を図り、07年3月期には約50億9300万円の売り上げを計上していました。

 07年9月には、株式交換により、著名な医学者でもある水島裕氏が代表を務めていた株式会社LTTバイオファーマ(東証マザーズ上場)により完全子会社化され、このところは投資事業や事業再生事業に特に力を入れていたようです。

 ところが、親会社のLTTバイオファーマがインフォメーションしたところによると、このアスクレピオスが不正な取引を行っていた疑いのあることが発覚しました。3月19日に同社を営業者とする匿名組合契約に基づく出資金の投資家への償還が資金不足のため不能となって、債務超過状態に陥っていることが判明。冒頭にお話したように破産手続き開始決定を受けることとなってしまいました。

 ところで、これまで新聞各紙が報道しているところによると、この倒産劇には次のような詐欺臭い事件があったことが分かっています。

 アスクレピオスは、大手総合商社の丸紅と共同で医療機関の再生事業を行っていると投資家に説明し、総額数百億円の出資を募っていました。ところが、300億円余りを出資したある投資家が3月になって配当の支払いが滞ったので問い合わせたところ、どうも共同事業自体が架空のようだということが発覚しました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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