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第4回《合併症編》
麻疹は健康な人が死ぬ病気

2008/04/10

 麻疹は自然治癒する疾患ではあるが、合併症の頻度が約30%と高いことでも知られている。麻疹の致死率は約0.1~0.2%といわれ、基礎疾患のない従来健康な人が命を落としたり、重度の後遺症を残すこともまれではない。にもかかわらず、この「はしかは死ぬ病気である」という事実が、一般にあまりにも知られていないことに、危機感を覚える。

3割に合併症が出現、2大死因は肺炎と脳炎
 合併症として頻度が高いのは、肺炎中耳炎クループ症候群腸炎肝機能異常だ。脳炎心筋炎などを合併することもある。麻疹の治療は対症療法しかなく、合併症を予防する手だてはない。合併症の頻度は5歳未満と20歳以上で高いといわれているが、基本的には患者全員がハイリスクだと考えた方がいいだろう。

 肺炎と脳炎は麻疹の2大死因であり、小児の死亡原因の多くは肺炎、成人の死亡原因の多くは急性脳炎といわれている。2007年の流行では、半年の間に麻疹脳炎が9例(10代4例、20代5例)報告された。2008年も、3月23日までの診断分で既に4例(10代1例、20代1例、30代2例)の麻疹脳炎が報告されている。この4例は、いずれも麻疹含有ワクチンの接種歴はなかった。

著者プロフィール

多屋馨子(国立感染症研究所感染症情報センター第三室〔予防接種室〕室長)●たや けいこ氏。1986年高知医科大学(現高知大学)卒。2001年国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。

連載の紹介

【臨床講座】麻疹の流行に備えよ
「はしかは子供の病気」というのは、もはや過去の常識。非常に強い感染力を持ち、時に健康な人を死に至らしめる麻疹に、日常診療でどう立ち向かえばいいのか。診断・治療・予防に役立つ基礎知識をまとめました。

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