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 全国のおそらく1000万人は下らないであろう方々と同様、先週の「三代前からマーメイド」のフレーズには戦慄にも似たゾクゾク感を覚え、10月に入っての今週は、いわゆる「あまロス」症候群に筆者も罹患してしまった。

 言わずと知れた「あまちゃん」の諸々について、今さら小欄で熱苦しく論じる必要はないだろう。ただドラマ本編とは別に忘れてはならないと思うのが、毎回の最後にほっこりとさせてもらっていた「まだまだあまちゃんですが」。岩手県、そして東北を中心とした各地で、様々な仕事の修行に励む若き職業人たちを1人ずつ紹介し、医療従事者も当然、何人か登場していた。ということで今回は少々強引だが、数年後の「あまちゃん」医師たちが直面するかもしれない、最近聞いた気になる話を取り上げてみたい。

卒後の就労義務期間、専門医の取得は困難
 7月末、千葉大で開かれた日本医学教育学会で1題のポスターに目が止まった。演題タイトルは、鹿児島大離島へき地医療人育成センターの根路銘安仁氏による「地域枠医学生のキャリア計画時の問題点」。数年後には医学部卒業生の1割以上を「地域枠」の学生が占めることになるが、彼らは卒後一定期間のへき地などでの義務就業期間中、専門医資格を取得するためのキャリアを積むのが困難という問題を提示していた。

 多くの読者がご存知の通り、医学部の地域枠推薦は、へき地の医師不足解消のため各地方の大学医学部が設けている推薦入試枠のこと。在学中は県などから奨学金が支給され、その返還免除の条件として、卒後の一定期間、へき地などでの診療への従事を課せられることが多い。

 鹿児島県の場合、地域枠卒業生は初期臨床研修を鹿児島大病院と県立病院で、3年次に実務研修を県立病院で行った後、県が指定する医療機関で6年勤務する。そのうち2年はへき地診療所だ。医師としてのキャリアを考える上で問題となるのが、県指定の医療機関に各学会が定める研修機関がどれだけあるか。そこで根路銘氏らは、新専門医制度で想定されている基本領域について、就業義務期間中の勤務先で専門医資格が取得できるか否かを調べた。

 その結果、鹿児島県における地域枠学生卒後勤務予定先で、何らかの専門医取得の関連施設となっていたのは18施設。多くの専門医で研修などの基幹施設としている鹿児島大学病院など市街地の病院は勤務予定先にない。そのため、現時点の制度で就業義務期間中に取得が可能な専門医は、外科、整形外科、産婦人科、泌尿器科、麻酔科、救急救命科、リハビリテーション科の7科に過ぎず、内科(総合内科専門医)や小児科の取得はできないという状況だった。

 つまり、地域枠で卒業した医師は、卒後しばらくの期間、基本領域の多くで専門医の取得は難しく、その後のキャリアに少なからずのビハインドを負ってしまうということ。鹿児島県および鹿児島大では問題をいち早く認識し、勤務先などについて既に対策を検討し始めている。早晩、いろいろな地域でも同様に議論されることになるだろう。

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