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未治療のマントル細胞リンパ腫の高齢者に対するRiBVD療法の完全寛解率が約6割に【ASH2013】

2013/12/10
森下紀代美=医学ライター

 未治療のマントル細胞リンパ腫(MCL)の高齢者に対し、RiBVD療法(リツキシマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)による完全寛解(CR)率は約6割と高く、毒性も受容可能と考えられることが、Lysaグループによる前向きのフェーズ2試験(Lymphome Du Manteau 2010 SA)の予備的な結果から示された。12月7日から10日まで米国ニューオリンズで開催されている第55回米国血液学会(ASH2013)で、フランスUniversity Hospital GrenobleのRemy Gressin氏が発表した。

 MCLのファーストライン治療として、リツキシマブと化学療法の併用療法の有効性と安全性の改善を目指し、さまざまな薬剤の臨床試験が行われている。リツキシマブとベンダムスチンの併用療法は、良好な寛解率と無増悪生存期間(PFS)が報告されている(Mathias J. Rummel, et al. Lancet 2013;381:1203-1210)。

 フェーズ2試験の主要目的は、新規に診断された未治療の高齢のMCL患者を対象として、RiBVD療法のPFSに対する効果を評価すること、副次的な目的は、RiBVD療法を4サイクルおよび6サイクル施行後の毒性と寛解、全生存期間(OS)、生存に関する予後因子の検討、疫学研究だった。今回は、4サイクル施行後の毒性と寛解について報告された。

 対象は、2008年のWHO分類によるMCLで、化学療法未治療、CD20陽性、ECOG PS 0-2、Ann Arbor分類のII-IV期、65歳を超える、または65歳未満で自家幹細胞移植(ASCT)に適合しないなどの条件を満たす患者だった。中枢神経系の転移や急性HBV/HCV/HIV感染症はないこととした。

 RiBVD療法は28日を1サイクルとし、リツキシマブ375mg/m2を1日目、ベンダムスチン90mg/m2を1、2日目、デキサメタゾン40mg/m2を2日目にそれぞれ静脈内投与した。神経毒性の軽減を図るため、ボルテゾミブは皮下投与とし、1.3mg/m2を1、4、8、11日目に投与した。ウイルス感染症の予防にはバラシクロビルが使用されたが、ニューモシスチス症に対する推奨はなかった。

 RiBVD療法を4サイクル施行後、International Working Group response criteria(2007年)による中間評価を行い、寛解を認めた場合は計6サイクルまで施行した。最終評価は6サイクル施行後に行った。微小残存病変(MRD)の評価は、1、4、6サイクル施行後および追跡期間中も継続した。

 2011年11月から2012年12月までに76人が登録され、評価可能だった70人の結果が得られた。70人中、男性は49人、年齢中央値は72歳(範囲:64-83)、Ann Arbor分類のIII-IV期は65人、ECOG PS 2は11人、マントル細胞リンパ腫国際予後指標(MIPI)で中危険群は19人(27%)、高危険群は48人(69%)だった。

 予定された治療サイクルの96%(271サイクル)が完遂された。7人で治療が中止され、このうち3人は死亡、1人は毒性、3人は増悪による中止だった。完遂した271サイクル中、リツキシマブは99%、ボルテゾミブは94.5%、ベンダムスチンは99.8%が投与された。

 PETを用いない評価とPETによる評価で、寛解は同様の結果だった。PETを用いない評価では、61人(87%)で寛解が得られ、CRは42人(60%)、PRは19人(27%)だった。PETによる評価では、それぞれ61人(87%)、39人(57%)、21人(30%)となった。PRの9人がPET陰性、CR/CRu(未確定完全寛解)の11人がPET陽性だった。

 分子生物学的効果も良好な結果で、評価が可能だった患者において、血液中のMRDは34人中29人(85.3%)、骨髄MRDは26人中22人(84.6%)で陰性となった。

 毒性の評価では、ニューモシスチス症、サイトメガロウイルスの再活性化、脱毛、視覚や聴覚の異常は認めなかった。4人が死亡し、治療関連死は進行性多巣性白質脳症の1人のみ(リツキシマブ)だった。グレード3または4の血液毒性では、好中球減少が46%、血小板減少が35%、貧血が7%に発現した。発熱性好中球減少は7%に観察された。

 神経毒性は、グレード3の事象が13%に発現した。グレード2および3の神経毒性が発現した16人中、14人は3サイクル施行後の発現で、年齢との相関はなく、11人で可逆性だった。ボルテゾミブを皮下投与したことにより、神経毒性は、RiPAD+C療法(リツキシマブ、ボルテゾミブ、ドキソルビシン、デキサメタゾン、chlorambucil)で報告された18%よりも低く、RBV療法(リツキシマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ)で報告された7%よりも高い値だった。

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