乳がんを患って、乳房や脇の下のリンパ節を切除した場合、切除した側の腕(上肢)にリンパ浮腫や腕を動かしたときの痛み、皮膚のひきつれ感が起こる。こうした腕の症状は、術後から腕の運動やマッサージによって予防することができる。
ここでは、腕や肩の障害を防ぐ運動やマッサージに詳しい東北大学大学院医学系研究科保健学専攻がん看護学分野教授の佐藤冨美子氏に、乳がん術後に見られる上肢機能の異常がなぜ起こるのかを解説していただくとともに、こうした上肢機能障害を予防するための腕の変化の評価やマッサージ、運動を紹介していただいた。このVol.3では、肩関節の障害を防止するための運動について解説します。
2 肩関節可動域制限(運動障害)の予防と改善方法
乳がんの術後に起こりうる上肢の運動障害(肩関節可動域制限と言います)は、手術直後から計画的にリハビリを行うことで予防できます。退院後はリハビリを生活に組み入れて、手術後3~6カ月頃までに手術しない側や手術前の腕を挙げた時の高さに戻ることを目標にリハビリを続けます。
注意)
・痛みがある場合は、無理のない範囲で行いましょう。
・実施する時間帯は、身体が温まっている入浴後や日中身体を動かした後に行うとよいでしょう。痛みが少なく、効果的です。
◆手術翌日からドレーンが抜けるまでの期間の運動
指の曲げ伸ばし運動としてじゃんけんやボール握り、手関節の曲げ伸ばし、肘の曲げ伸ばしを行います。ドレーンが抜去されるまでは、腋窩や創部の血清成分やリンパ液が溜まりやすい可能性があるため、肩の運動は控え、肘から指先までの運動を行います。