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JAMA誌から
小児の髄膜炎治療におけるステロイド併用は利益なし
死亡率低減と入院期間短縮は見られず

 細菌性髄膜炎の小児患者に対するステロイドの利益を評価した後ろ向き研究の結果、ステロイド治療なしの患者と比べて死亡率と入院期間に差がないことが示された。米国Philadelphia小児病院のJillian Mongelluzzo氏らの報告で、詳細はJAMA誌2008年5月7日号に掲載された。

 成人の細菌性髄膜炎患者に対するステロイドの補助的投与は死亡率を有意に減らすことが明らかになっている。特に肺炎球菌による髄膜炎で利益は大きい。しかし小児を対象とした研究では、相反する結果が得られていた。

 B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae b:Hib)に起因する髄膜炎の小児患者では、補助的なステロイド投与が聴力損失を抑制することが明らかになっている。しかし米国では、Hibと肺炎球菌に対するワクチン接種が広まるにつれて、細菌性髄膜炎の疫学が大きく変化し、Hibが原因の髄膜炎は減少した。このような状況の中、ステロイドが小児患者の多くに利益をもたらすかどうかは明らかではない。その点に留意した米国のガイドラインは、生後6週以上の小児患者については、ステロイドの使用に先駆け、リスクと利益を勘案するよう求めている。

 補助的なステロイド投与は、抗菌薬の初回投与と同時、またはその直後に行うことになっている。抗菌薬が作用して溶菌が起こると、これが原因となって炎症と脳浮腫が生じる危険性があるためだ。ステロイドは、炎症反応を抑えることにより患者に利益をもたらすが、ステロイドが抗菌薬の脳脊髄液への移行を妨げる、消化管出血などの有害事象を引き起こす、抗菌薬が十分に作用しなくても発熱が抑えられるために治療失敗が明確になりにくい、といったリスクも想定される。そこで著者らは、細菌性髄膜炎の小児患者を対象に、ステロイドを補助的に用いた場合の影響を調べた。

 今回の後ろ向きコホート研究は、米国内27の3次小児医療機関から提供される情報を登録したPediatric Health information Systemのデータベースから、18歳未満の小児で1次診断が細菌性髄膜炎であり、2001年1月1日から2006年12月31日までに退院した2780人の小児に関するデータを抽出した。うち、入院から24時間以内にステロイドが投与されていた患者を補助的ステロイド投与患者とした。

 ベースラインの交絡因子の数が多いため、多変量モデルでは十分な信頼性が得られないと考えた著者らは、特定の治療(今回はステロイド投与)を受ける可能性を一群の交絡因子から推定する傾向スコアを利用することにした。ベースラインの患者の人口統計学的特性と病気の重症度を示すマーカーを用いて傾向スコアを求め、これで調整したCox比例ハザード回帰モデルを適用して、エンドポイントについて分析した。年齢によって原因病原菌が異なるため、患者を年齢で層別化して比較を行った。

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