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ヒヤリ・ハット事例<110>
夏場、ウレパールとリンデロン-VG軟膏の混合には注意【全文掲載】

2008/05/26

1 処方の具体的内容は?
70 歳代、女性
<処方 1> 当科(皮膚科)より、平成 18 年 12 月 X 日(処方オーダリング)

ウレパール20 g
リンデロン-VG 軟膏 0.12%20 g
混合手足に塗布1 日 2 回

 
 
<処方 2>当科(皮膚科)より、平成 19 年 6 月 X 日(処方オーダリング)

ウレパール20 g
リンデロン-VG 軟膏 0.12%20 g
混合手足に塗布1 日 2 回


2 何が起こりましたか?
  • ウレパールとリンデロン-VG 軟膏の混合軟膏の水が分離して使いにくいとクレームを受けた。
3 どのような過程で起こりましたか?
  • 7 月 X 日(薬剤交付 2 週間後)に患者は再度当院を受診した。
     
  • その際に、患者は処方 2 の軟膏を持参して「6 月 X 日にもらった軟膏は、こんなに水が浮いて分離した。このまま使っても大丈夫か?前回 12 月に出たのと同じと聞いたが、本当に同じものか?12 月の塗り薬は、分離しなかった。」と述べた。
     
  • 確認したところ、確かに水分が分離していた。
     
  • しかし、前回 12 月に同じものを処方しており問題がなかったことから、処方せんを応需した薬局に連絡して、確認してもらうこととした。
     
  • 患者には、当該薬局に行ってもらい、薬局には、その後の経過を報告してもらうよう依頼した。
     
  • 当該薬局では、まず各メーカーに混合時の安定性について問い合わせたところ以下のような回答を得たとのことであった。

    • ウレパール(大塚製薬)
      ウレパールは基本的には他剤との混合は推奨しないが、リンデロン-VG 軟膏との混合は室温(25 度)で 1 ヶ月以内なら、混和性・外観・硬さなどには変化がないとの結果がある。高温(40 度)になると 7 日程度で、混合軟膏の浸潤が認められる。
       
    • リンデロン-VG 軟膏(塩野義製薬)
      ウレパールとの混合では、1ヶ月は室温で外観上の変化が認められない。配合変化が起きにくいという点から冷蔵庫保存がよいのではないか。
  • このため、患者には、薬は前回の 12 月と同じものであること、この薬は、室温においては 1 ヶ月は外観上の変化は認められないとのことだが、今は夏場で暑いために、浸潤が起こったのかもしれないと説明したそうである。これに対して患者は、「暑いところには置いていない、押入れだから大丈夫のはず」と話し、あまり納得していない様子だったとのことである。
     
  • また薬局の薬剤師より、今度は冷蔵庫で保存するように説明するので、できればもう一度新しい薬を処方してもらえないか、との申し入れがあったため、再度処方 2 を処方した。
     
  • 浸潤が認められなかった前回(12 月)と今回(6~7 月)との温度の違いが影響しているのではないか、と考え、薬局の薬剤師と連携し、当該薬局からウレパールとリンデロン-VG 軟膏を等量混合を、室温(当該薬局の職員控室)と冷蔵庫(5 度設定)に置いてもらい、経過をみてもらうことにした。
     
  • 薬局からの報告は次の通りであった。すなわち、室温保存のみ 2 日目でかなりの湿潤が見られた。(1 日目は、未観察のため不明)一方、冷所保存は湿潤等の外見の変化はなかった。さらに、2 ヶ月経過後も、外観はそれぞれ 2 日後の状態と同様であった。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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