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ゾッとする診療報酬改定を面白くする法

2008/06/20

酔っ払いから説教されて
 「診療報酬改定で、おたくはどれくらい下がった?」なんて会話がちょうど今ごろ、全国の開業医の間で交わされていることでしょう。まるで大阪のおっちゃんたちが「もうかりまっか?」と挨拶しあっているみたいですが、そんな会話を楽しんでいるわけにはいきません。私の病院も2年ごとの診療報酬改定の度に経営が大変になってきているからです。

 4月に道路特定財源が一カ月間廃止されたとき、全国のガソリンスタンドでドライバーたちが大騒ぎをしていました。そのニュースを見て、お医者さんはなんて大人しいんだろうと思いました。やられっぱなしばかりじゃ癪です。毎度毎度の診療報酬改定を経営に“生かす”方法について、今日は話してみたいと思います。

 自分で言うのも変ですが、私は元来ぼっちゃん育ちのせいなのか、経営とか診療報酬とかは大の苦手でした。そのため、川崎医大の川崎誠治副理事長や矢野経済研究所の遠藤邦夫氏らに、無理やり海外まで病院視察に連れて行かれたりもしました。夜は現地で「おまえもちゃんと経営しろ!」と二人の酔っ払いから説教まで受ける始末でした。

 そんなこんなで海外のいろんな病院を視察してみると日本とはかなり違うなあという印象を受けました。病院とデパートが一緒になっていたり、病院と葬儀場が一緒になっていたりと、日本では考えられない斬新な工夫も発見することができました。

 “酔っぱらい”たちの説教もあって、私自身も自分の病院でいくつかの小さい経営の工夫は試みています。無線機屋さんに行って病院内で使える携帯端末を探して管理職に配ったり、大分の別府杉乃井ホテルが、一つしかない朝食会場で2000人近くの宿泊客を待ち時間なく誘導しているのをみて、外来事務と外来看護師に患者誘導をスムースに行うためのインカムを持たせたりもしました。

事務方以外の現場スタッフにも学んでもらう
 さて、2年に一度やってくる診療報酬改定ですが、私が理事長を辞めるまで、毎回大量の資料を読んで、何度も講習会を聞きに行くなんて考えただけでもゾッとします。4年に一度のオリンピックの倍の頻度で、この嫌なイベントがやってくるのは耐えられません。と考えた末に思いついたのが、「一人でやろうとするから面白くない。みんなにやってもらおう」ということでした。いつもの「いい加減経営」です。

 まず、2月ころから送られてくる膨大な資料を、院内の各部署別に仕分けをします。例えば、外来に関係する点数の資料、リハビリに関係する資料、レントゲンに関する資料等々。複数の部署にまたがるものや、どこの部署か迷う場合は、コピーして関係あると思われる部署すべてに配ります。

著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
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『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
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 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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